今回は脳卒中後遺症の一つである嚥下障害のセルフチェックとリハビリ方法についてまとめてみます。
監修:西本 武史(医師・医学博士)
介護医療院グリーン三条施設長。広島大学医学部卒業後、脳神経外科医(脳神経外科専門医・脳卒中認定医)として急性期病院20年、回復期病院6年勤務。国立がんセンター研究所で2年半研究に従事。
嚥下障害について
脳卒中による嚥下障害とは
舌や口の筋肉をコントロールする神経が障害されることで、食べ物を上手く飲み込めない状態です。
通常の嚥下では食道を通過する食物が気道に入ってしまうことを誤嚥といい、これが起こりやすい状態が嚥下障害です。
嚥下障害の症状
- 食事中にむせる。
- 固形物を噛んで飲み込めなくなる。
- 食事が疲れ、最後まで食べきれない。
- 食後に声がかれる。
- 体重が減る。
嚥下障害があると誤嚥性肺炎になるリスクが3倍になると言われています。
誤嚥性肺炎とは
唾液や食べ物などが気管へ入ることで肺の中が炎症を起こし、激しいせきや高熱が出ます。
日本における死因はがん、心疾患、老衰、脳血管疾患についで肺炎が5番目に多いですが、70歳以上の肺炎の約8割が誤嚥性肺炎だと言われています。
嚥下機能チェック
(1つでも当てはまると要注意)
□過去に1回でも誤嚥・窒息がある
□肺炎・発熱を繰り返す
□脱水・低栄養状態がある
□拒食・食欲低下がある
□食事が1時間以上かかる
□硬いものより軟らかいものを好むようになった
□食事中・食後にむせやせきが多い
□食後に声がかれる
□夜間にせき込む
□口や喉に違和感や食べ物が残る感じがある
舌筋のチェック
上顎に舌をつけたまま大きく口を開けることができる。
→難しい場合は低位舌という舌の筋力が弱った状態で、むせの原因になります。
自宅でできるリハビリ
後頭下筋群のストレッチ
後頭下筋群という首の後ろにある筋肉を伸ばすことで、顎を引く筋肉(頚部屈筋群)を働きやすくします。
- 正面を向いてしっかり顎を引く
- 顎を引いたままへそを見るようにゆっくり下を向き10秒キープ
- 顎を引いたままゆっくり正面に戻る
パタカラ体操
口輪筋や舌筋の運動により嚥下機能を改善する体操です。
- パの音:口を閉じる筋肉 ⇒ 食物が口から出ないようにする
- タ、ラの音:舌の先の筋肉 ⇒ 食物をすくい上げる
- カの音:舌の奥を持ち上げる筋肉 ⇒ 食物を口の中から喉へ送り込む
「パパパパパ、タタタタタ、カカカカカ、ラララララ」と1つの音を5回づつ発声し、それを3回程度繰り返します。
あいうべ体操
舌を上顎につけれるようになることで口呼吸や嚥下機能を改善する体操です。
- 大きく口を開いて「あー」で5秒キープ
- 舌を上顎につけ、しっかり唇を横に引いて「いー」で5秒キープ
- しっかり口をすぼめて「うー」で5秒キープ
- 下顎めがけて力いっぱい「ベー」で5秒キープ
まとめ
嚥下障害のセルフチェックとリハビリ方法について簡単にまとめてみました。
もっと詳しく知りたい方のために、おすすめの書籍も紹介しておきます。