ダンスやスポーツでは、静止した姿勢の安定よりも、動いている最中にブレない身体がパフォーマンスを大きく左右します。
ジャンプやターン、素早い切り返しなどの瞬発的な動作は、体幹が“動きに合わせて安定する力(=動的体幹)”が弱いと、フォームが崩れやすく、ケガの原因にもなります。
娘のダンス練習に関わるようになってから、効率よくケガを防ぎ、パフォーマンスを上げる方法について考えることが増えました。
この記事では、動的体幹がなぜ大切なのかをわかりやすく解説し、私が娘のために考案したサーキットトレーニングをご紹介します。
動的体幹トレーニングとは?
「動的体幹トレーニング」とは、動いている最中でも姿勢や軸を安定させるための体幹トレーニングのことです。
プランクのように止まった姿勢で支えるのではなく、身体をひねる・伸ばす・移動するなど、実際の競技動作に近い動きの中で体幹をコントロールする力を鍛えます。
このトレーニングでは、姿勢を支えるインナーユニット(腹横筋・多裂筋・横隔膜・骨盤底筋群)を中心に、回旋動作を安定させる腹斜筋、肩や股関節を支える前鋸筋・殿筋群といったパフォーマンスに直結する筋群を総合的に強化できるのが特徴です。

2つの体幹トレーニングの違い
①静的体幹トレーニング(プランクなど)
- 体幹を固める
- 基礎的な安定性をつくる
②動的体幹トレーニング
- 動きの中で軸を保つ
- 方向転換・加速・減速などの“変化”に強くなる
競技力に直結するのは後者で、競技中の「瞬時の姿勢コントロール」は動的体幹なしには生まれません。
動的体幹が弱いと起きやすいケガと動作不良
動的体幹が弱い場合、次のような特徴が見られます。
- 急な方向転換で膝が内側に入る(Knee-in)
- ジャンプ着地で股関節が潰れる
- 接触プレーで倒されやすい
- 走り出し・切り返しで体が遅れる
- 腰・膝への負担が大きくなる
これは単なる「筋力不足」ではなく、動きの中で軸を保つコントロール能力が低いことが原因です。
結果として、ケガリスクが高まります。
- 腰痛
- 膝痛(ACL損傷リスク増)
- 足首の捻挫
- ハムストリングスの肉離れ
動的体幹を鍛えることで得られるメリット
動的体幹が強くなると、競技パフォーマンスが大きく変わります。
- 切り返しが速くなる
- 加速・減速のコントロールがスムーズ
- ジャンプ着地が安定し、ケガ予防に直結
- 接触プレーで倒れにくい
- 手足の力を最大限引き出せる「伝達力」が向上
- 無駄な力を使わず、疲れにくい動きへ改善
特に「動きを止める・方向を変える・姿勢を保つ」といった局面で圧倒的な差が出ます。
おすすめ動的体幹サーキットトレーニング
トレーニングの流れは「安定 → コントロール → 回旋 → 全身連動」で構成しています。
- スタティックビーストホールド(20秒)
- ビーストリーチ(左右3回)
- サイドキックスルー(左右3回)
- スコーピオンリーチ(左右3回)
- エイプリーチ(3回)
- ラビットウォーク(5回)
- ラテラルエイプ(左右3回)
- クラブリーチ(左右3回)
- ブリッジ(20秒)
アスリート・ダンサーどちらにも効果が高く、ウォームアップ〜基礎強化までカバーできます。
①スタティックビーストホールド(20秒)

- 四つ這いから膝を数センチ浮かせ、両手とつま先で保つ姿勢になる。(ビースト姿勢)
- 肩・腰がブレないように背中をフラットに保つ。
【効果】
- 体幹の安定性アップ
- 腕・脚の連動の基礎づくり
- 動き出しのブレ防止(初動が安定する)
②ビーストリーチ(左右3回)
- ビースト姿勢から伏せるように重心を落とし、そのまま腕立ての姿勢へ移行する。
- 体幹を安定させたまま、片脚をサイドへ大きく持ち上げる。
【効果】
- サイドステップ・切り返しの軸がブレにくくなる
- 横方向の動き出しがスムーズになる
- 走る・跳ぶ動作の“横ブレ”を改善
③サイドキックスルー(左右3回)
- ビースト姿勢から右手を引きながら、左足を右側に伸ばす。
- 右足も同じように行う。
【効果】
- 回旋動作の可動域アップ
- ステップやターン動作のしなやかさ向上
- 股関節まわりの強化でケガ予防にも◎
④スコーピオンリーチ(左右3回)
両手をついて腰を持ち上げ、片足を反対側へ大きく伸ばして体をひねる。
【効果】
- 脊柱のしなやかさを高める
- 反り・ひねり動作の可動性向上
- 腰痛予防や切り返しのスムーズさ向上
⑤エイプリーチ(3回)
- しゃがんで背中を丸め、腕を前に伸ばして手の甲を合わせる。
- つま先立ちで両膝を開いた姿勢で、腕を左右に広げて手のひらを上に向ける。
【効果】
- 足腰の筋力強化
- 股関節・足首の柔軟性改善
- 骨盤の歪み改善
⑥ラビットウォーク(5回)

両手を床につけて前方へ跳ねる。
【効果】
- 上下動のコントロール向上
- 腕〜体幹〜脚の連動強化
- 加速・減速のメリハリづけに有効
⑦ラテラルエイプ(左右3回)

両手を床につけて体重を支えながら、左右へリズムよく跳ねるように移動する。
【効果】
- 低姿勢での安定性向上
- サイドの瞬発力強化
- ディフェンスや横移動の耐性がUP
⑧クラブリーチ(左右3回)
クラブ姿勢(四つ這いの裏向き)から腰を持ち上げ、片腕を反対側へ伸ばして体をひねりながらブリッジに入る。
【効果】
- 胸郭の可動域向上
- 体幹の伸展・回旋のバランスUP
- 手をつく動作(着手系)や上半身のしなり改善
⑨ブリッジ(20秒)

仰向け姿勢からお尻を上げ、肩〜膝までを一直線に保つ。
【効果】
- 臀筋・ハムストリング・背筋の強化
- 背骨や骨盤周りの柔軟性改善
- 腰痛予防
トレーニングの注意点
- 深い呼吸をしながら実施する
- 動きを急がず、コントロールする
- 肩・体幹を安定させて動く
- 痛みのない範囲で行う
まとめ
ダンサー・アスリートに必要なのは、「動きながら軸を維持できる身体」です。
静的な体幹トレだけではつくれない、競技中のリアルな動きに耐えられる“実戦型の体幹”こそが、ケガ予防にもパフォーマンスアップにも最も効果的になります。
動的体幹トレーニングで、ケガを減らし、動きのキレと安定感を引き上げていきましょう。


