今回は日本で最もメジャーな片麻痺の評価法ともいえる「ブルンストローム・ステージ」について振り返ってみたいと思います。
この評価は国家試験にも出題されるので、学生のころに必ず習う評価ではないかと思います。
臨床に出て使うことがなくなったという方も、今一度振り返ってみると新しい発見があるかもしれません。
ブルンストロームステージとは
1960年代に理学療法士のシグネ・ブルンストロームによって提唱された方法です。
この評価は片麻痺の回復過程をステージ化したものです。
ステージは麻痺の程度によってⅠ~Ⅵまであり、上肢・下肢・手指をそれぞれ評価します。
ブルンストローム・ステージの回復ステージ
ステージⅠ | 随意運動がみられない |
ステージⅡ | 連合運動が出現する |
ステージⅢ | 共同運動が出現する |
ステージⅣ | 分離運動が一部出現する |
ステージⅤ | 分離運動が充分可能となる |
ステージⅥ | 運動の協調性、スピードが回復する |
これだけでは評価の基準が曖昧なので、上田式12段階片麻痺機能テストと合わせて活用するのがよいかと思います。
上肢のブルンストローム・ステージ
ステージⅠ:弛緩性麻痺
開始肢位:背臥位で麻痺側の肩関節外転・外旋位で指先を同側の耳に近づけた位置。
テスト:麻痺側の肩関節外転・外旋位で健側の肘関節伸展に抵抗を加え、麻痺側の大胸筋の収縮を確認する。
判定:収縮なし → ステージⅠ、収縮あり → ステージⅡ‐1
ステージⅡ:痙性発現期
開始肢位:背臥位:ステージⅠと同じ
テスト:麻痺側の手を対側の腰へ伸ばすように指示して大胸筋の収縮を確認する。
判定:収縮がある → ステージⅡ‐2
ステージⅢ:痙性期
①伸展共同運動
テスト:ステージⅡと同じように指示して運動を確認する。
判定:臍の下→十分
②屈曲共同運動
開始肢位:座位で麻痺側の上肢を健側の腰へ伸ばした状態。
テスト:麻痺側上肢を対側の腰から同側の耳まで持っていくように指示して屈曲共同運動を確認する。
判定:乳頭の上→十分
ステージⅣ:痙性減弱期
3つのテストがいくつできたかでⅣ‐1、Ⅳ‐2かを評価する。
①肩関節内旋
テスト:座位、麻痺側上肢を背中に回す。
判定:脊柱より5㎝以内→十分
②肩関節屈曲
テスト:座位、肘関節屈曲20°以内で麻痺の肩関節を屈曲する。
判定:60°以上→十分
③前腕回内
テスト:座位、肘関節90°屈曲位、肘を身体に付けた状態で前腕を回内する。
判定:50°以上→十分
ステージⅤ:痙性減少期
3つのテストがいくつできたかでⅤ‐1、Ⅴ‐2、Ⅴ‐3かを評価する。
①肩関節外転
テスト:座位、肘関節伸展位で肩関節を外転する。
判定:60°以上→十分
②肩関節屈曲
テスト:座位、肘関節伸展位で肩関節屈曲。
判定:130°以上→十分
③前腕回外
テスト:座位、肩関節90°屈曲位で前腕回外。
判定:50°以上→十分
ステージⅥ:痙性最小期
2つのスピードテストで評価し、どちらか一つでもできればステージⅥになる。所要時間は健側の1.5倍以内で十分の判定。
①肩関節挙上テスト:指先を同側の肩につけて真上に挙げる運動を10回繰り返す。
②肩関節外転テスト:肩関節を外転90°まで挙げる運動を10回繰り返す。
下肢のブルンストローム・ステージ
ステージⅠ:弛緩性麻痺
開始肢位:背臥位、両股関節・膝関節屈伸展位
テスト:健側の股関節内転に抵抗を加え、麻痺側の股関節内転筋群の収縮を確認する。
判定:収縮なし → ステージⅠ、収縮あり → ステージⅡ-1
ステージⅡ:痙性発現期
開始肢位:ステージⅠと同じ。
テスト:麻痺側股関節を内転するように指示して、股関節内転筋群の収縮を確認する。
判定:収縮あり → ステージⅡ‐2
ステージⅢ:痙性期
①伸展共同運動
テスト:背臥位、麻痺側の膝関節90°屈曲位から下肢伸展。
判定:伸展20°以下→十分
②屈曲共同運動
テスト:背臥位、下肢伸展位から股関節・膝関節の屈曲。
判定:股関節屈曲90°以上→十分
ステージⅣ:痙性減弱期
3つのテストがいくつできるかでⅣ‐1、Ⅳ‐2かを評価する。
①股関節屈曲
テスト:背臥位、膝関節伸展位で股関節屈曲。
判定:30°以上→十分
②膝関節屈曲
テスト:座位、膝関節90°屈曲位から足底を滑らせて膝関節屈曲。
判定:100°以上→可能
③足関節背屈
テスト:座位、踵を床に着けたままで足関節背屈。
判定:5°以上→可能
ステージⅤ:痙性減少期
3つのテストがいくつできるかでⅤ‐1、Ⅴ‐2、Ⅴ‐3を評価する。
①足関節背屈(臥位)
テスト:背臥位、下肢伸展位で足関節背屈。
判定:5°以上→十分
②足関節背屈(座位)
テスト:座位、股関節60°~90°屈曲位・膝関節20°以下伸展位で足関節背屈。
判定:5°以上→十分
③股関節内旋
テスト:座位、股関節内旋。
判定:20°以上→十分
ステージⅥ:痙性最小期
スピードテストで評価する。所要時間は健側の1.5倍以内で十分の判定。
①股関節内旋テスト:座位での股関節内旋を10回繰り返す。
手指のブルンストローム・ステージ
ステージⅠ:弛緩性麻痺
- 手指の筋収縮が全くない。
ステージⅡ:随意性の出現
- 随意的に手指の屈曲がわずかに可能。
- 連合反応で手指屈曲がみられる。
ステージⅢ:屈曲傾向の発現
- 随意的に集団屈曲が可能となり物を握れる。
- 随意的な伸展が困難で物を離すことはできない。
ステージⅣ:伸展運動の発現
- 集団伸展が一部可能。
- 横つまみが可能。
ステージⅤ:巧緻性の出現
- 集団伸展が充分可能。
- 対向つまみ・筒握り・球握りが可能。
- 動きは不器用で実用性は低い。
ステージⅥ:巧緻性の向上
- 全ての握り、つまみが可能。
- 完全伸展が可能。
- 分離運動が可能になるが正確さは健側に劣る。
臨床での活用方法
ブルンストローム・ステージは片麻痺の回復段階を示しているので、ステージに応じた関節可動域運動(ROMex)を取り入れると効果的です。
- ADLなどの動作練習の準備運動として取り入れる。
- 自動運動や自動介助運動を自主トレメニューにする。
上肢ステージⅢの肩関節へのアプローチ例
- 肘関節屈曲位での肩関節屈曲の自動運動(屈曲共同運動)
- 肘関節軽度屈曲位での肩関節屈曲の自動介助運動(わずかな分離運動を介助)
- 肘関節伸展位での肩関節屈曲の自動介助運動(分離運動を介助)
- 肘関節軽度屈曲位での肩関節屈曲の自動運動(わずかな分離運動から動作練習(運動学習)へ)
※自動介助運動から自動運動や生活動作につながるように段階付けて実施します。
まとめ
ブルンストローム・ステージは片麻痺の回復の評価にも治療にもなります。
基本を大事に技術を磨くことは重要に思います。