「この評価が本当に必要なんだろうか?」
「数値を測ることに何の意味があるんだろうか?」
リハビリ評価でこのように思ったことはありませんか?
評価がリハビリの実施前と実施後で、効果を比較するものという認識だけでは不十分かもしれません。
評価は目標設定、仮説検証にも必要なものです。
今回は評価を分類して、どのように使い分けると効果的なリハビリになるかをお伝えできたらと思います。
リハビリ評価の分類
リハビリテーションで使用する評価方法を量的評価と質的評価に分けて説明します。
1.量的評価とは
数字で表す評価のことです。養成校で習うのはこちらが主になるかと思います。
身体機能面
- ROMテスト(関節可動域検査)
- MMT(徒手筋力検査法)
- 握力
- FIM(機能的自立度評価表)
- ファンクショナルリーチテスト…など
認知機能面
- HDS-R(長谷川式認知症スケール)
- MMSE(ミニメンタルステート検査)
- TMT…など
メリット
- 結果が数値なので検者・被検者ともに変化がわかりやすい。
- 計測が容易である。
デメリット
- 見た目に変化しても数値化できないことがある。
- 細かい内容を問わない。
運動の質、筋収縮のバランスなどの内容までは測れないので、量的評価のみではただの測定になります。
数値に対する教科書的な裏付けや実際の運動との比較などの分析が必要です。
2.質的評価とは
数字以外で表す中身の評価のことです。
身体機能面
- 動作分析
- アライメント
- 運動発達…など
認知機能面
- コミュニケーション
- 行動観察…など
メリット
- 数値では変動しないような細かい部分を評価できる。
- 見た目や本人の価値観を大事にできる。
デメリット
- 検者・被検者ともに変化がわかりにくい。
- 評価にある程度の知識を要する
質的評価のみでは客観性に乏しく、セラピストの感覚のみに左右される恐れがあります。
主観的な評価にならないためには、正しい知識に基づいた経験が必要です。
メリット・デメリットからわかるように量的評価と質的評価はお互いを補う補完関係にあります。
一つの項目に対してなるべく量的・質的の両方から評価した方がよいでしょう。
PDCAサイクルが回る評価
目標設定における評価の重要性
症例をもとに各評価でどのような目標設定になるのかを比較してみたいと思います。
症例
- 60歳代男性
- 左片麻痺(BRS上下肢、手指ともにⅢ~Ⅳ)発症後1年経過
- 移動:杖歩行で屋外自立レベル
- 主訴:横断歩道を渡れるようになりたい。
量的評価
評価:TUG(timed up to go)テスト、10m歩行テスト
目標:TUGテスト30秒→20秒、10ⅿ歩行テスト20秒→12秒に改善して、横断歩道を渡れるようになる。
「本当にそのタイムが出せる?」「タイムだけ上がっても大丈夫?」と思いませんでしたか?
質的評価
評価:姿勢分析、歩行分析
目標:立位姿勢と患側の立脚期を改善することで歩行リズムが円滑になり、横断歩道を渡れるようになる。
良くなったような感じはしますが、「これで横断歩道が渡れる?」と思いませんでしたか?
量的評価と質的評価
目標:立位姿勢と患側の立脚期を改善により、TUGテスト30秒→20秒、10ⅿ歩行テスト20秒→12秒となり、横断歩道を渡れるようになる。
今回は量的と質的をつなげただけですが、少し説得力がありませんか?
目標では量的評価で指標となる数値、質的評価で根拠に基づいた仮説にすると具体的になります。
PDCAサイクルの回し方
大まかな説明にはなりますが、各評価でPDCAサイクルでの違いを比較してみたいと思います。
量的評価
- Plan(計画):TUGテスト30秒、10ⅿ歩行テスト20秒を改善する。
- Do(実行):歩行の反復練習でタイムを縮める
- Check(評価):TUGテスト、10ⅿ歩行テストでタイムが縮まったか?
- Action(改善):微調整が難しいので継続or方向転換→手段の目的化
量的評価のみでは中身を問わず計測結果を改善するためのアプローチを実施しやすいです。
質的評価
- Plan(計画):立位姿勢と患側の立脚期を改善
- Do(実行):立位保持練習、患側下肢支持でのステップ練習
- Check(評価):姿勢分析、歩行分析
- Action(改善):微調整or方向転換
PDACサイクルが質的な要素を段階的に上げる工夫により、回っていくのをご理解いただけたらと思います。
但しActionでレベルアップしていけるような、根拠がある段階付けになっていないとPDCAサイクルが止まります。
質を上げて量で効果判定することで、目標に向かってPDCAサイクルが回ります。
まとめ
量的評価と質的評価をバランスよく使用することで、目標設定や仮説検証作業がスムーズになることがご理解いただけたでしょうか?
状態やその変化をただ測るだけではなく、具体的な目標設定と仮説検証のために使用することで、セラピストと患者様の自己実現の近道になるように思います。