「セミナーでいい方法を教えてもらったけど実際にやると効果が出ない。」
「もっと効果的ないい方法が知りたい。」
このように思うことはありませんか?
この場合、対象者の状態を評価することより、いろいろな方法を知ることで問題解決ができると考えているかもしれません。
これを手段の目的化の罠といい、手段を変更すると問題解決ができるように錯覚し、様々な方法だけ知ることで安心感を得るようになります。
今回は手段の目的化とそこから抜け出す方法についてお伝えしたいと思います。
手段の目的化について
手段の目的化とは
手段の目的化とは、ある目的を果たすためにとった手段が、いつのまにかその手段を行うこと自体が目的にすり替わっていることです。
物事が進まない場合の思考や心理として、パーキンソンの法則や現状維持バイアスなどありますが、頑張っているけど結果につながらないという場合は手段の目的化にはまっていることが多いように思います。
手段の目的化はPDCAサイクルのように目標に向かって成長していくサイクルではなく、計画よりも実行を重視した短絡的な反応です。
手段の目的化の例
①本来の目的を忘れるケース
行動が習慣化した場合に陥りやすいです。
- 頭が洗えるようになるために始めた肩関節の可動域訓練が、角度を上げることの方が目的になっていた。
- 自宅で安全に歩けるようにと思って始めた歩行練習が、リハビリで20分歩くこと自体が目的になっていた。
- 技術を磨きたいと思って行き始めたセミナーが、セミナーに行くこと自体が目的になっていた。
②本来の目的を知らないケース
自分よりも立場が上と感じるの方の判断で行動した場合に陥りやすいです。
- 似た症状の方のリハビリが本に載っていたので行っていた。
- 先輩からいいと言われたので行っていた。
- 患者様が歩きたいと言われたので歩いていた。
共通点
①計画が不十分で物事へ短絡的に反応していること
②その時の安心感を優先して行動していること(メンタルブロック)
手段の目的化から抜け出す方法
WhyとHowで目的を再検討する方法
Action(改善):目標の再設定or方向転換
手段の目的化は気になった部分に対して反応的に実行していることがほとんどです。
現在実行していることが毎回同じように続くようであれば、計画を立て直す必要があります。
現在実行していること以外の選択肢が出るところまでニーズを掘り下げ、実行していることが本当に適切かを再検討します。
ニーズを掘り下げるときは現在の訴えに
- なぜ(why)
- どのように(how)
が結び付いているかを考えます。
例:肩関節の関節可動域運動を継続している
◯現在の目的:楽に肩を動かせるようになりたい。
これに反応すると肩に限局した評価とアプローチ(do)になりやすいです。選択肢が一つしかないような感覚になります。
評価:肩関節の可動域制限、運動時痛など量的評価が中心です。
◎本来の目的:服を着ると肩が痛いので外出の頻度が減りました。
なぜ肩が動かなくなったか(why)、どのように生活で困っているか(how)を明確にします。
評価:更衣動作や姿勢の分析など質的評価が増え、それに伴いアプローチ方法も増えます。
Whatに対して、WhyとHowの結び付きが重要です。
「~なりたい」「~したい」だけに反応するとWhatに対してDoで返し、手段の目的化にはまりやすくなります。
実行していることを掘り下げる方法
Action(改善):微調整
実行していることの質的評価を増やすことで、計画を具体的にします。
例:肩関節の関節可動域運動を継続している
角度以外の質的な基準を設けます。
- 持ち方の工夫
- 運動方向の理解
- 主動作筋、拮抗筋の収縮
- 代償パターンの理解
- ADLとの相関
まとめ
実施することを前もって準備しておくことは大切ですが、対象者の問題解決よりもセラピストが行いたい方法が主体にならないように注意が必要です。
同じアプローチが続いているという方、似たような学習をしていることが多いという方は参考にしていただけたらと思います。