今回は日本で年間10万人が受傷していると言われる大腿骨頸部骨折の術後や退院後のリハビリについてお伝えします。
大腿骨頸部骨折について
大腿骨頸部骨折とは、転倒や転落などにより大腿骨頸部の関節包の内部で生じた骨折のことです。
一方で関節包の外側の骨折は大腿骨転子部骨折といい、合わせて大腿骨近位部骨折と呼ばれます。
関節包の外部は血流が豊富で骨がつきやすいですが、関節包の内部は血流が悪く骨がつきにくいという違いがあります。
どちらの骨折も女性に多く、加齢や骨粗鬆症により骨がもろくなると転倒した際に発症しやすくなります。
レントゲン、CT、MRIといった画像をもとに診断されます。
受傷した際の症状
- 足の付け根の痛み
- 立ったり歩いたりすることが難しい
- 仰向けで膝立てや足を持ち上げることが難しい
不全骨折で痛みを伴いながらも動けることがありますが、多くは進行して完全骨折になるようです。
合併症を伴うことがあり深部静脈血栓症のような生命に危険を及ぼすものや、認知症の発症・悪化といった重度の介護が必要になるケースもあります。
手術
ガイドラインでは不全骨折を含め手術が推奨されています。
骨接合術
DHS、γ-nail、ハンソンピンなど骨同士を金具で固定します。
人工骨頭置換術
大腿骨頭を人工の物に取り換えます。
リハビリテーション
深部静脈血栓症の予防
術前・術後は運動不足や血流低下により血栓症形成のリスクがあるので足の指や足首の運動をしっかり行います。
骨接合術による機能低下の改善
大腿筋膜張筋、外側広筋の切開により股関節内転、膝関節伸展の可動域制限が起こりやすくなります。
人工骨頭置換術による機能低下の改善
大腿筋膜張筋、大殿筋の切開、梨状筋などの外旋筋群の切離(切り離した状態になるため切開よりも機能低下する)により股関節伸展、内転の可動域制限が起こりやすくなります。
人工骨頭置換術後は脱臼に注意が必要です。
後方アプローチの禁忌肢位
:股関節屈曲、内転、内旋
注意すべき動作
- 横座り
- 足を組んで椅子に座る
- 移乗・歩行時の方向転換
- 床の物を拾う
荷重時痛の改善
骨折による痛みは股関節近位部の痛みや腫れです。
術後の痛みの大半は1週間程度で軽減すると言われています。
荷重時の痛みは股関節内転筋群の緊張によるものが多く、適切にリハビリを行うことで軽減できることがあります。
自宅でできるリハビリ
片脚立位
片足で立つことで太ももの筋肉やお尻の筋肉を鍛えます。
- 椅子などにつかまりできるだけ良い姿勢で立つ
- 悪い方の足を軸足にして、良い方の足をゆっくり上げる
- 片足を上げたまま10秒キープしてゆっくり元に戻す
- 左右3回ずつを目安に行う
股関節外転運動
中殿筋を鍛えることで左右のバランスを改善します。
- 椅子などにつかまりできるだけ良い姿勢で立つ
- 悪い方の足を軸足にして、良い方の足を真横にゆっくり上げる
- 片足を上げたまま10秒キープしてゆっくり元に戻す
- 左右3回ずつを目安に行う
お尻上げ
立ったり歩いたりすることが難しい方はベッド上で腹筋やお尻の筋肉を鍛えることをおすすめします。
- 仰向けで膝を立てお尻、腰、背中の順でゆっくり上げる
- 背中、腰、お尻の順でゆっくり降ろす
- 5回を目安に繰り返す
まとめ
大腿骨頸部骨折の症状、術後の管理やトレーニングについて簡単にまとめてみました。
もっと詳しく知りたい方のために、おすすめの書籍も紹介しておきます。