「立って靴下を履くとフラつく」
「長く立っていると腰が痛い」
こんなことはありませんか?
実はその原因、足首でバランスを取る"足関節戦略"がうまく働いていないことかもしれません。
足首の使い方を見直すことで、姿勢が安定し、腰や膝への負担も軽減できます。
この記事では、立っているときのバランスの取り方のチェック方法と、改善方法をご紹介します。
バランス戦略について
体がバランスを取る仕組み
私たちの体は、立っているときや歩いているとき、常にわずかに重心が揺れています。
その揺れの大きさや状況に応じて、体は無意識のうちに"2つのバランス戦略"を使い分けて姿勢を保っています。
- 足関節戦略
- 股関節戦略
足関節戦略(ankle strategy)
足関節戦略は、足首の小さな動きでバランスを取る方法です。
たとえば、立っていて少し体が前に傾いたとき、足首をほんの少し動かして姿勢を戻します。
これは、下半身を中心に細かく調整して、体の軸をまっすぐに保つ働きです。

日常生活の多くの動作では、この足関節戦略が自然に使われています。
股関節戦略(hip strategy)
股関節戦略は、股関節を中心に上半身と下半身を逆方向に動かすことでバランスを取る方法です。
たとえば、電車で急に揺れたときに、体を前後に傾けて倒れないようにする動きがそれにあたります。

足関節戦略だけではコントロールできない大きな揺れや、不安定な床の上では、股関節戦略が働きます。
この2つの戦略はどちらが良い・悪いというものではなく、状況に応じて無意識に使い分けていることが大切です。
不適切なバランス戦略とは?
日常生活の多くの動作では、足首でバランスを取る「足関節戦略」が基本です。
しかし、加齢や運動不足、姿勢の崩れなどで足首や体幹の働きが弱くなると、足首での調整が難しくなり、股関節を大きく動かしてバランスを取る「股関節戦略」に頼りやすくなります。
股関節戦略の代償例
- 手を伸ばして物を取るとき、足首を使わず腰から上を大きく倒す
- 片足立ちで靴下を履くとき、骨盤が左右に大きく揺れる
- 歩行中、わずかな揺れで骨盤が左右に大きく動く
股関節戦略に頼りすぎると、わずかな揺れでも姿勢が崩れやすくなり、インナーマッスルの働きが低下します。

トレンデレンブルグ歩行は、股関節戦略とは異なり、患側に上体を傾ける代償です。股関節戦略が機能しないことで起こります。
足関節戦略が苦手な方の特徴
- 麻痺などで足首が不安定な方
- 浮き指や外反母趾など、足の裏をうまく使えない方
- 反り腰や猫背、立位で「休めの姿勢」をとるなど、骨盤にゆがみがある方
- 反張膝や太ももの筋力低下など、膝の動きが硬い方


足関節戦略とインナーマッスルの関係
足関節戦略の本質は、「動かないで安定する」ことではなく、小さな揺れ(=インスタビリティ)をコントロールして軸を保つことにあります。
その微細な調整を支えているのが、体幹や骨盤まわりのインナーマッスルです。
足関節戦略に必要な機能
- 足の裏で重心を感じる感覚受容器
- ヒラメ筋・前脛骨筋などの下腿の姿勢保持筋
- 骨盤を支える多裂筋・腸腰筋・腹横筋
といった深層筋

これらが連携して働くことで、姿勢が安定し、わずかな揺れにも対応できる“しなやかな安定”が生まれます。
バランス戦略セルフチェック

片足立ちをして10秒キープしてみましょう。
このとき、どの部分でバランスを取っているかを感じます。
【結果の目安】
●足首が細かく動いて姿勢を保てている
→ 足関節戦略が機能
●上体を大きく揺らしたり、お尻を横に振って姿勢を保っている
→ 股関節戦略に偏り
●すぐに足をついてしまう
→ 両方の戦略が十分に使えていない可能性
足関節戦略を高めるリハビリ
立位でタオルギャザー(1日1分)
座位で行うタオルギャザーに比べて、立位で行うと次の効果が加わります。
- 足底感覚と重心コントロール
- ヒラメ筋・前脛骨筋の同時活性
- 体幹と下肢の協調性アップ

【方法】
足裏全体で床を感じながら、足の指だけでタオルを手繰り寄せます。
左右の足を交互に行いましょう。
足の指を動かすことで、重心が崩れにくくなることが目標です。

慣れてきた方は、片足立ちでチャレンジしてみてください。
【注意点】
- 足元を見すぎると姿勢が崩れるため、正面を向いたまま行います
- 体が前後左右に揺れないように、姿勢を保ちながら行います
- 不安定な方は、椅子や壁につかまってからはじめてください
まとめ
立っているときのバランスの取り方の種類やチェック方法、改善方法についてまとめました。
- バランス戦略について
- 不適切なバランス戦略とは?
- 足関節戦略とインナーマッスルの関係
- バランス戦略セルフチェック
- 足関節戦略を高めるリハビリ
足首でバランスを取る力は、毎日の「立つ」「歩く」を支える大切な土台です。
足首を意識して使うことで、姿勢が整い、体への負担も軽くなっていきます。
無理のないペースで、少しずつ“足元からの安定”を育てていきましょう。