今回は片麻痺の手指の評価とリハビリ方法についてまとめてみます。
監修:西本 武史(医師・医学博士)
介護医療院グリーン三条施設長。広島大学医学部卒業後、脳神経外科医(脳神経外科専門医・脳卒中認定医)として急性期病院20年、回復期病院6年勤務。国立がんセンター研究所で2年半研究に従事。
片麻痺(手指)について
片麻痺の回復は表面のアウターマッスルからはじまり、回復するにつれて中にあるインナーマッスルが働くようになります。
はじめに動かしやすくなるアウターマッスルとは反射が起こりやすい筋肉(神経伝達が速い筋肉)です。
反射が起こりやすい筋肉は意図的に力を入れやすい反面、力の加減が難しいという特性もあります。
そのためアウターマッスルを使った運動ばかりをしていると手足の震え、突っ張り、痛みの原因になります。
インナーマッスルマッスルが働くことで力の加減ができるようになりますが、そのためには関節が動く感覚をしっかり脳に伝えることが重要とされています。
図のように片麻痺の回復は通常の筋力UPとは異なりますので、状態に応じた運動が必要です。
麻痺の評価(ブルンストロームステージ)
片麻痺の評価として日本で最も使われているブルンストロームステージについてご紹介します。
この評価は麻痺の状態を6段階で判定します。
評価に使われている運動は回復段階になるので自主トレーニングとしても有効です。
ステージⅠ:弛緩麻痺
手指の筋収縮が全くない状態。
ステージⅡ:随意性の出現
- 随意的に手指の屈曲がわずかにできる。
- 健側に力を入れた時、連合反応で手指屈曲がみられる。
ステージⅢ:屈曲傾向の発現
- 随意的に集団屈曲ができるようになり物が握れる。
- 随意的な伸展は困難で物を離すことはできない。
ステージⅣ:伸展運動の発現
- 集団伸展がわずかにできる。
- 母指で横つまみができる。
ステージⅤ:巧緻性の出現
- 集団伸展が充分にできる。
- 対向つまみ、筒握り、球握りができる。
- 動きが不器用で実用性は低い。
ステージⅥ:巧緻性の向上
- 全ての握り、つまみができる。
- 完全伸展ができる。
- 分離運動ができるが正確さは健側に劣る。
自宅でできるリハビリ
日常生活動作
手のポジショニング
- 座位時は、手を膝の上に置く。
- 手が滑り落ちないように手のひらの感覚を感じる。
食事
- 食事の際、手をテーブルの上に置く又は食器を持つ。
- 手が滑らないようにテーブルや食器の質感を感じる。
トレーニング
手で体に触れる
健側の手で補助して麻痺側の手のひらや手の甲で、自身の体の様々な部分に触れることで、手の感覚を高める。
ボールやタオルを握る
ボールやタオルを握り、手のひらや指の力が入る感覚、物の硬さや質感を感じる。
握りが難しい場合、タオルや新聞に手のひらを置いたり摩ったりすることで、手の感覚を高める。
手首の運動
両手を組んでできるだけ麻痺側の手首の力でゆっくり左右に動かす。
※手指は手首が安定するほど動かしやすくなります。
まとめ
片麻痺の手指機能の評価とトレーニングについて簡単にまとめてみました。
もっと詳しく知りたい方のために、おすすめの書籍も紹介しておきます。