脳卒中後に

「右ばかり見ている」
「左を全く向かない」

このような様子はありませんか?

このような状態は、半側空間無視と呼ばれる症状の可能性があります。

半側空間無視は、転倒や事故のリスクにも関わる重要な症状です。

早期から適切な評価と生活での工夫を行うことで、安全性や自立度の向上につながります。

今回は、脳の右半球の病気によって左側の認識が難しくなる「半側空間無視」の評価とリハビリ方法についてまとめてみます。

監修:西本 武史(医師・医学博士)
介護医療院グリーン三条施設長。広島大学医学部卒業後、脳神経外科医(脳神経外科専門医・脳卒中認定医)として急性期病院20年、回復期病院6年勤務。国立がんセンター研究所で2年半研究に従事。

半側空間無視について

半側空間無視とは、視力の問題とは別に、片側の空間を認識できなくなる症状です。

主に、右側の脳(右半球)の出血や梗塞によって起こり、左半身の麻痺を伴うことが多いです。

単に「見えていない」のではなく、

  • 左側に注意が向かない
  • 左側の存在に気づかない

という特徴があります。

そのため本人は、「見えていない自覚がない」ことが多く、周囲の理解も重要になります。

半側空間無視の主な評価方法

半側空間無視は、いくつかの簡単な検査で評価することができます。

模写試験(図形模写)

図形や時計などを写してもらい、左側の書き落としがないかを確認します。

例:

  • 時計の数字が右側に偏る
  • 図形の左半分が描かれない

線分二等分試験

1本の線を真ん中で分けてもらう検査です。

左側の認識が弱い場合、中央より右寄りで線を分ける特徴が見られます。

抹消試験(キャンセレーションテスト)

紙に並んだ図形や文字の中から、指定されたものに印をつけてもらいます。

評価ポイント:

  • 左側の見落としが多い
  • 左下の見落としが多い
  • 探索の開始位置が右側になる

一緒に起こりやすい症状

半側空間無視は、次のような症状と一緒に現れることがあります。

プッシャー症候群

体が傾いているにも関わらず、麻痺側(多くは左)へ押し返してしまう現象です。

体を真っ直ぐに戻そうとすると、逆に強く抵抗することがあります。

身体失認

体の半分を自分のものとして認識できなくなる症状です。

例:

  • 麻痺側の手足に関心がない
  • 麻痺側を動かそうとしない

着衣失行

衣服の前後や左右が分からず、うまく着衣ができなくなる症状です。

日常生活で起こりやすい問題

半側空間無視は、生活のさまざまな場面に影響します。

例えば、

食事

  • 左側のおかずを残す
  • 左側の食器に気づかない

車椅子操作

  • 左足をフットレストに乗せない
  • 左ブレーキをかけ忘れる

移動

  • 左側の人や物にぶつかる
  • 左側の通路を見落とす

更衣

  • 右半分しか着ない
  • 左袖に腕を通さない

トイレ

  • トイレットペーパーが左にあると分からない
  • 水洗ボタンを探せない

コミュニケーション

  • 左からの声かけに反応しない

これは「聞こえていない」のではなく、注意が向いていないことが原因です。

半側空間無視のリハビリの考え方

半側空間無視のリハビリでは、
「無理に左を見させる」ことよりも、
自然に注意が広がる環境を作ること
が重要です。

無理に苦手な側へ注意を向けさせると、

  • ストレスが増える
  • 疲労しやすい
  • 集中力が低下する

可能性があります。

まずは、注意が持続できる環境づくりが大切です。

簡単にできる生活リハビリ

日常生活の中でできる工夫を紹介します。

無視がない側から話しかける

最初から苦手な側から関わると、

  • 注意が向きにくい
  • 脳が疲労しやすい

ことがあります。

まずは、認識しやすい側(多くは右)から関わることで、会話に集中しやすくなります。

その後、徐々に左側への注意を広げていきます。

食事場面での工夫

食器の配置を工夫することで、食べ残しを減らすことができます。

ポイント:

  • 食器はまず右側に配置する
  • 食器の数を少なくする
  • 色のコントラストをつける
    (例:白い皿に濃い色の食材)

また、食事の途中で皿の位置を少し左へ移動することも効果的です。

環境設定の工夫

生活環境を整えることも重要です。

例:

  • よく使う物は右側に置く
  • 危険物は左側に置かない
  • 左側に注意を向けやすい目印を置く
    (例:赤いテープなど)

自宅でできるトレーニング

自宅で安全に行えるトレーニングを紹介します。

紙コップ積み

とてもシンプルですが、注意の広がりを促す効果があります。

方法:

  1. 認識できる位置で紙コップを積む
  2. 積めるようになったら横にも広げる
  3. ピラミッド状に積み上げる

ピラミッドが大きくなるほど、注意できる範囲が広がっていると考えられます。

模写・塗り絵

注意の持続と空間認識の改善に有効です。

方法:

  • 簡単な塗り絵
  • 簡単な図形を写す
  • 線をなぞる

ポイント:

右側から始めて、徐々に左側へ広げることが大切です。

体の左側への意識づけ

身体への注意を高めることも重要です。

例:

  • 右手で左の身体を触る
  • 左手で物を触る
  • 左側から軽く触れて刺激を入れる

身体への注意は、空間への注意にも影響します。

まとめ

脳卒中後遺症で多い半側空間無視の評価とリハビリ方法についてまとめました。

半側空間無視は、

  • 転倒
  • 衝突
  • 事故

につながる重要な症状です。

しかし、

  • 環境設定
  • 生活の工夫
  • 継続できるトレーニング

を組み合わせることで、改善が期待できます。

また、トレーニングは本人の興味がある課題を選ぶことが、継続と集中につながります。

「できることを広げる」ために、無理のない方法から始めていきましょう。

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