靴下を履く動作は、座って履いたり立って履いたりなど、人によって方法が様々です。

その中でも立って靴下を履く動作は、

  • 片足立ちでの安定
  • 下肢の挙上
  • 体幹と上肢の協調

といった複数の機能が必要となるため、日常生活動作(ADL)や転倒予防と深く関係する重要な動作です。

片足立ちの安定性が高まることで、

  • ズボンの着脱
  • 靴の着脱
  • 階段昇降
  • 歩行中のバランス保持

など、さまざまな動作につながり、結果として転倒しにくい身体づくりにもつながります。

この記事では、立って靴下を履く動作の構成要素と観察ポイントについて整理してみます。

靴下を履く動作の構成要素

靴下を履く動作には、

  • 靴下の認知
  • 手指操作
  • バランス調整

など多くの要素が関わりますが、今回は臨床で特に重要となる3つの要素に絞って整理します。

① 片足立ちでの安定

片方の下肢を真っすぐ上げるには、もう片方の下肢で安定した立位ができていることが重要です。

片足立ちの安定には、以下の筋の働きが重要になります。

関与する筋

● 支持側下肢

  • 中殿筋
  • 大腿四頭筋
  • ヒラメ筋

● 体幹

  • インナーユニット(腹横筋・多裂筋・横隔膜・骨盤底筋群)

神経学的なポイント

片側下肢を上げる前には、先行性随伴性姿勢調節(pAPA’s)が働きます。

この働きにより、

  • コアが先に安定する
  • 骨盤が軽度後傾する
  • 支持側下肢に荷重が移動する

といった準備が起こり、運動側下肢の挙上がスムーズに行われます。

臨床でよく見られる問題

片足立ちが不安定な場合、

  • 支持側の足部が不安定
  • 骨盤が横に逃げる
  • 体幹を反らして固める

といった代償が起こりやすくなります。

また、

  • 股関節可動域制限(反り腰傾向)
  • 腸腰筋の筋力低下

があると、運動側下肢が上がりにくくなることがあります。

② 体幹と上肢の協調性

靴下を履く際には、体幹を下肢へ近づける動きが必要になります。

このとき、

  • 骨盤後傾
  • 体幹屈曲

が適切に起こることで、無理なく足部へ手が届きます。

関与する筋

● 体幹

  • 脊柱起立筋(遠心性収縮)
  • 腹筋群

● 上肢

  • 広背筋
  • 前鋸筋
  • 上腕三頭筋

上肢では、

  • 肩甲骨外転
  • 肘関節伸展
  • 手関節の安定

が必要になります。

神経学的なポイント

立位保持では、

  • 前庭系
  • 内側毛様体系

が働いていますが、足部へリーチする際には、

上肢の選択的運動を優位にするため、姿勢系の活動が調整されます。

この調整がうまくいかないと、

  • 体が揺れる
  • 肩がすくむ
  • 上肢操作がぎこちない

といった問題が生じます。

③ 足関節の運動

足関節は、靴下を履く際に非常に重要な役割を担っています。

基本的な流れは次の通りです。

① 下肢挙上時
→ 足関節背屈

② つま先を入れる
→ 背屈保持

③ 踵を通す
→ 底屈へ切り替え

この切り替えがスムーズにできることで、靴下を効率よく履くことができます。

神経学的なポイント

足部の選択的運動には、外側皮質脊髄路系が関与しています。

この働きが低下すると、

  • 足部が固まる
  • 細かな操作が難しい

といった症状が見られます。

観察のポイント

立って靴下を履く動作は、支持側で立ち続けながら、運動側を操作するという特徴があります。

ここでは、健常者でも見られる非効率な動作をもとに観察ポイントを整理します。

① コアコントロール

コアコントロールが不十分な場合、

  • 骨盤後傾
  • 下肢挙上
  • 足部操作

が難しくなります。

観察項目

□ 支持側下肢が3点支持できているか
(母趾球・小趾球・踵)

□ 運動側下肢が真っすぐ上がるか

□ 骨盤後傾や体幹屈曲が起こるか
(反り腰で固めていないか)

□ 足関節の動きがあるか

② 体幹・肩甲骨の可動域

体幹や肩甲骨周囲の柔軟性が低下すると、

  • 体幹屈曲不足
  • リーチ不足

が起こります。

観察項目

□ 骨盤後傾が十分に起こるか

□ 体幹が滑らかに屈曲できるか

□ 上肢リーチ時に肩甲骨が挙上していないか
(すくめ動作に注意)

評価・介入につなげる考え方

この動作を観察することで、単なる「靴下が履けるかどうか」だけでなく、どの機能が不足しているのかを見つけることができます。

例:よくある問題と介入方向

● 支持側が不安定
→ 片足立ち練習
→ 中殿筋トレーニング

● 下肢が上がらない
→ 腸腰筋トレーニング
→ 股関節可動域改善

● 手が届かない
→ 体幹屈曲練習
→ 肩甲骨モビライゼーション

このように、ADL動作から機能へ分解して考えることが重要になります。

歩行分析にもつながる視点

立って靴下を履く動作でみられる
「片脚支持」「重心移動」「体幹の安定性」は、歩行にも共通する重要な要素です。

特に支持脚の安定性や中殿筋の働きは、歩行周期の中でも大きく関わります。

歩行分析の基本については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

歩行周期(ランチョ・ロス・アミーゴ方式)と筋活動!歩行分析3つのポイント 「歩けるようになりたい」「もっと上手に歩けるようになりたい」 このような希望を持つ方に関わる機会は多いのではないでしょうか。 ...

まとめ

立って靴下を履く動作は、

  • 片足立ちの安定
  • 体幹と上肢の協調
  • 足関節の操作

といった多くの機能を必要とする、非常に意味のある評価動作です。

この動作を丁寧に観察することで、

  • 下肢機能
  • 体幹機能
  • バランス能力

などの問題点を明確にすることができます。

日常生活動作の改善や転倒予防のためにも、靴下を履く動作を一つの評価ツールとして活用してみてください。

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