身体機能の評価・治療

肩関節の機能解剖【肩甲上腕リズム】

肩関節は可動域制限や痛みが起こりやすく、治療に悩むことが多い部位の一つではないかと思います。

肩関節は身体の様々な関節の中でも可動域が広く、その分構造も複雑です。

今回は肩関節の構造と運動時の筋活動について考えてみたいと思います。

肩関節について

肩関節は一般的には肩甲上腕関節のことを指しますが、肩甲骨・上腕骨・鎖骨・胸骨・胸郭に関連する5つの関節で構成されています。

肩甲上腕関節

肩甲骨の関節窩と上腕骨頭で形成された関節

第二肩関節

肩甲上腕関節の上方と肩峰の間の関節

ここにある肩峰下滑液包は肩関節の動きを滑らかにする

肩鎖関節

肩峰関節面と鎖骨肩峰端にある関節面との間の平面関節

胸鎖関節

胸骨と鎖骨との間の関節

形態学的には鞍関節、機能的には球関節

肩甲胸郭関節

肩甲骨と胸郭との間の関節

肩甲上腕リズムについて

肩甲上腕リズムとは肩関節挙上時に肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の動く角度が2:1の比率になるというものです。

実際の比率には個人差があり、研究者によっても比率が異なるのであくまで目安ということになります。

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肩関節運動時の筋活動

肩関節屈曲

①肩関節屈曲0〜60°肩甲上腕関節のみ

  • 動力筋:三角筋前部繊維、烏口腕筋、大胸筋
  • 制限因子:棘下筋、小円筋、大円筋

②肩関節屈曲60°〜120°肩甲骨が動き始める

  • 動力筋:僧帽筋、前鋸筋
  • 制限因子:大胸筋、広背筋

③肩関節屈曲120°~180°脊柱が動き始める

  • 動力筋:三角筋、棘上筋、僧帽筋、前鋸筋
  • 制限因子:大胸筋、広背筋、大円筋

肩関節外転

①肩関節外転0〜60°肩甲上腕関節のみ

  • 動力筋:三角筋、棘上筋

※肩関節30°屈曲位での外転が真の生理的外転と考えられている

②肩関節外転60°〜150°肩甲骨が動き始める

  • 動力筋:僧帽筋、前鋸筋
  • 制限因子:広背筋、大胸筋(150°付近で制限)

③肩関節外転150°~180°脊柱が動き始める

  • 動力筋:三角筋、棘上筋、僧帽筋、前鋸筋、対側の脊柱起立筋群

肩関節を安定させる筋

肩関節の安定には回旋筋腱板(ローテーターカフ)と言われる4つの筋肉がバランスよく働くことが必要です。

  • 棘上筋:肩関節外転に作用
  • 棘下筋:肩関節外旋に作用
  • 小円筋:肩関節外旋に作用
  • 肩甲下筋:肩関節内旋に作用

回旋筋腱板は深部筋なので表層筋である三角筋とのバランスも重要です。

肩甲骨を安定させる筋

肩甲骨は肩関節の運動に常に先行して安定に働くことで運動をスムーズにしています。

肩甲骨の安定には上方回旋筋群と下方回旋筋群がバランスよく働くことが必要です。

上方回旋筋群:僧帽筋、前鋸筋

下方回旋筋群:肩甲挙筋、小胸筋、菱形筋

疾患などでバランスが崩れた場合の多くは

  • 上方回旋筋群→筋力低下
  • 下方回旋筋群→高緊張

腕の挙上に伴い肩甲骨後退、肩甲骨挙上する方は肩甲骨が不安定な状態です。

腕を挙上する運動よりも肩甲骨周辺の前鋸筋、僧帽筋(特に下部繊維)から鍛える必要があります。

前鋸筋は肩甲骨を外転させる唯一の筋肉なので、機能が低下すると肩甲骨が後退しやすくなります。

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まとめ

肩関節の機能解剖について簡単にまとめてみました。

肩関節にアプローチする際のヒントになればと思います。

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