膝関節は加齢とともに機能低下や痛みを起こしやすく、アプローチする機会が多い部位の一つではないかと思います。
膝関節への介入はスクリューホームムーブメントを理解することで、評価と治療の幅が広がります。
今回はスクリューホームムーブメントのメカニズムと評価について考えてみたいと思います。
スクリューホームムーブメントとは
膝関節は大腿骨、脛骨、膝蓋骨で構成され、機能的には蝶番関節に近く、構造的には顆上関節に分類されます。
膝関節の屈伸運動は転がりと滑りの複合運動です。
屈曲初期の20°までが転がりのみ、屈曲に伴い前十字靱帯(ACL)の張力により滑りが増加し、深屈曲時はほぼ滑りの運動になります。
スクリューホームムーブメントは転がりから滑りへ移行する際に、大腿骨外顆が脛骨外顆の凸面を前方に押し出すために起こります。
簡単に言うと…
膝関節伸展時:最終域約30°から脛骨が外旋する
スクリューホームムーブメントのメカニズム
①大腿骨の形状
大腿骨内側顆が外側顆より大きいことで膝関節伸展最終域で脛骨が外旋します。
②前十字靭帯の張力
前十字靱帯(ACL)、外側側副靱帯(LCL)、内側側副靱帯(MCL)の張力がバランスよく保たれることで、膝関節伸展時に靭帯が緊張して脛骨が外旋します。
③大腿四頭筋の筋力
膝関節伸展を正常に行うための大腿四頭筋の牽引力が必要です。
スクリューホームムーブメント破綻の原因
メカニズムから考えると…
- 加齢による大腿四頭筋の筋力低下
- 加齢によるACLとLCLの張力低下
- 脛骨の前方変位による膝関節伸展制限
この背景には…
- 腹筋の筋力低下
- 殿筋群の筋力低下
- 縫工筋の筋力低下
- 股関節外旋筋群の筋力低下
- ハムストリングスの短縮
- 腸脛靭帯の緊張
上記による骨盤、股関節の不安定性が膝関節周囲の機能低下を加速させると考えられます。
スクリューホームムーブメントの評価
- 端坐位で膝関節屈曲90°から開始
- 他動運動で伸展を誘導
- 伸展時の脛骨外旋の程度を評価
加えて必要な評価
①膝関節のアライメントを評価
②下腿外旋症候群(ニーイントゥーアウト)
正常:膝蓋骨の下に脛骨粗面
下腿外旋:膝蓋骨の外側に脛骨粗面
③立位姿勢の分析
変形性膝関節症の立位姿勢は骨盤前傾型と骨盤後傾型に分類され、ともに膝は屈曲位となります。
④歩行分析
正常な歩行では立脚後期の膝関節伸展から遊脚初期の膝関節屈曲時では、下腿が内旋することで伸展が解除され屈曲が起こります。
膝関節周囲筋の筋力低下がある方は歩行周期を通じて膝関節軽度屈曲位になっていることが多いです。
変形性膝関節症では立脚初期から中期にかけて膝関節が外側に動揺するラテラルスラスト歩行になることもあります。
まとめ
膝関節の機能解剖について簡単にまとめてみました。
膝関節にアプローチする際のヒントになればと思います。