今回は脳卒中後の意識障害への介入について考えてみたいと思います。
意識障害というとまず覚醒レベルをupしたくなりますが、どのように介入するのがいいのでしょうか?
身体機能に関しては、随意運動が難しいこともあり維持することが目的になっていませんか?
意識障害についての知識を整理して、私なりの考え方をお伝えできたらと思います。
意識障害について
意識障害とは
物事を正しく理解することや周囲の刺激に対する適切な反応が損なわれている状態と定義されています。
意識は清明度、広がり、質的の3つの要素で構成されています。
①清明度の低下(覚醒)
- 昏睡:JCS100(半昏睡)〜JCS300(深昏睡)
- 嗜眠:強い刺激を与え続けないと覚醒しない状態
- 傾眠:刺激があれば覚醒するがすぐに混濁する状態
- 昏蒙:覚醒はしているが精神活動は浅い眠りに近い状態
- 明識困難状態:見当識障害はないが思考のまとまりが不十分で注意の選択、持続に低下が見られる状態
②広がりの低下(意識狭窄)
- 催眠
- 昏睡
- 半昏睡
- 昏迷
- 失神
③質の低下(意識変容)
- せん妄
- もうろう
意識のメカニズム
①清明度(覚醒)
脳幹網様体調節系(上行性脳幹網様体賦活系、視床下部調節系)に主座があると言われています。
上行性脳幹網様体賦活系があらゆる感覚刺激を入力し、視床を介して大脳全体を興奮させることで覚醒が保たれると考えられています。
②広がり、質的(認知)
大脳皮質全体が関与すると言われています。
脳卒中では大脳や脳幹が広範囲にダメージを受けることにより意識障害が起こります。
意識障害への介入について
評価について
①JCS
Ⅰ.刺激しなくても覚醒している
- 1.だいたい意識清明だが、今ひとつはっきりしない
- 2.見当識障害がある
- 3.自分の名前、生年月日が言えない
Ⅱ.刺激すると覚醒する状態、刺激をやめると眠り込む
- 10.普通の呼びかけで容易に開眼する
- 20.大きな声や揺さぶりで開眼
- 30.痛み刺激を加えつつ呼びかけるとかろうじて開眼
Ⅲ.刺激しても覚醒しない
- 100.痛み刺激に対して、払いのけるような動作をする
- 200.痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめたりする
- 300.痛み刺激に反応しない
②GCS
E:開眼
- E4.自発的に開眼
- E3.呼びかけで開眼
- E2.痛み刺激で開眼
- E1.開眼なし
V:言語反応
- V5.時、場所、人がわかる
- V4.時、場所、人があいまい
- V3.不適当な単語
- V2.理解不能な声
- V1.声なし
M:運動反応
- M6.指示に従う
- M5.痛いところに手を持っていく
- M4.逃避行動
- M3.異常屈曲反応
- M2.異常伸展反応
- M1.反応なし
③神経心理ピラミッド
神経心理ピラミッドでは最下層にあたり、心的エネルギーが枯渇した状態と捉えることができます。
よって心的エネルギーを蓄えることで次の階層の発動性に向かうと考えられます。
アプローチについて
まずは開眼すること、そして開眼が持続することがアプローチの目的になるかと思います。
覚醒レベルを上げるので上行性脳幹網様体賦活系を主に刺激しますが、介入中は大脳皮質へも刺激が入ります。
あまり不快な刺激を与えると覚醒後にせん妄やリハビリ拒否の原因になるかもしれません。
アプローチの例
①座位(離床)
脳幹は覚醒以外にも自律神経や姿勢筋緊張のコントロールにも関わっています。
過負荷にならないようバイタルサインに注意しながらギャッジ座位、車椅子座位で抗重力位になることで脳幹が刺激されます。
②関節可動域運動
随意筋を使うことは難しい状態ですが、運動誘導を工夫すれば不随意筋を働かせることができます。
不随意筋の筋収縮は身体機能の維持だけではなく大脳、脳幹への刺激にもなります。
運動誘導はゆっくり動かすこと、抗重力位で保持することになるかと思います。
③ハンドマッサージ(タクティールケア)
皮膚に触れることで脳幹網様体調節系(視床下部調節系)を刺激します。
適切に視床下部を刺激するとオキシトシンが分泌され不安やストレスを軽減すると言われています。
まとめ
痛みなどの不快な刺激で覚醒レベルを上げるのではなく、認知面も考慮して心地よく覚醒できれば、覚醒後のリハビリがスムーズに進むように思います。
離床の際は、基礎知識を持ってしっかりリスク管理をすることが必要です。