「同じことをやっているのに安定した効果が出ない。」
「前は上手くいったはずなのに今回は上手くいかない。」
自身のアプローチに対してこのように思うことはないですか?
この場合、実施しているアプローチのシステム化に問題があるかもしれません。
全てのアプローチがシステム化できるわけではありませんが、なるべくシステム化することで効果が安定しやすくなります。
リハビリの技術も野球の素振りと同じように、正しい手順を毎日繰り返し行う(ルーティン)ことで、確実にスキルアップできると思います。
今回はスキルアップにつながるルーティンワークと、そのためのシステム化についてお伝えできればと思います。
ルーティンについて
ルーティンとは?
ルーティンとは「決まりきった仕事」や「日々の作業」という意味です。
作業を一定の手順に従って、毎回同じ手順で繰り返すということになります。
野球のイチロー選手のバッターボックスに立ったときの仕草、ラグビーの五郎丸選手のキックの前のポーズなど、アスリートが使用しているのをよく目にするのではないかと思います。
決まったパターンを作ることで自身の状態の確認、精神の安定を図るなど、作業を効率的に行うために重要な考え方です。
ルーティン化のメリット・デメリット
メリット
- 業務の精度が向上する。
- ミスを減らすことができる。
- 重要なことに集中しやすい。…など
デメリット
- マンネリ化する
- 行っている作業について考えなくなる
- 変化が怖くなる…など
リハビリのルーティン化
リハビリのルーティン化の重要性
リハビリでは評価と治療を効率的にするために実施する方法をルーティン化することが有効だと考えています。
評価と治療を同時に考えることはマルチタスクになりますが、タスクが増えるほど一つのことへの注意が低下します。
対象者の状態の重要な部分を見逃さないためにもタスクをなるべく減らし、セラピストの集中力と作業効率を上げる必要があります。
そのためには自身が使用する治療方法をなるべくルーティン化することで、対象者の評価に集中できる状態を作ることになるかと思います。
但しリハビリの方法をルーティン化するには、高いレベルで繰り返すためのシステム作りがまず必要になります。
※システム化することなく同じ業務をただ繰り返すと、手段の目的化の罠にはまります。
もっとも重要なことに集中できるように作業のシステムを構築できることが理想です。
リハビリのルーティン化について
①ルーティン化できる作業・できない作業
◆できる作業
形式的な評価方法や治療方法などは詳細な部分までシステム化が可能です。
- ROMex(関節可動域訓練)
- ストレッチ
- マッサージ
- ROMテスト(関節可動域テスト)
- MMT(徒手筋力検査法)…など
形式的な方法の場合、実施する度に手順が変わると効果も不安定になり、年数を重ねても技術が向上しないように思います。(実技のフォームが決まりません。)
◆できない作業
対象者の状態に応じて方法が変化するような評価や運動などは、ある程度決まった手順は必要ですが、詳細な部分までシステム化することは難しいです。
- コミュニケーション
- 動作練習
- 動作分析
- 治療を行う順序…など
流動的な部分を固定化すると、対象者の状態に関係なく決まった方法を提供するようになるので注意が必要です。
②システム化の例
誰がやっても同じように実施できる手順がシステムです。なるべく細かく作成することで手順が明確になります。
固定化できる方法の手順を一つずつ理由付けしながら作成し、これをもとに毎日実施することで技術の精度を高めます。
例:背臥位で股関節屈曲の関節可動域運動を実施する手順
①臥位姿勢を修正する。
②大腿遠位部を外側から、下腿近位部を内側から支える。
③股関節を内外旋中間位にする。
④対象者の踵が浮かないように膝関節90°(膝立て位)へ誘導する。
⑤下腿近位部を外側から、下腿遠位部(踵部)を内側から支えるように持ち替える
⑥膝関節屈曲を誘導することで、股関節も自然に屈曲する。
細かく手順を決めることで技術の精度が上がり、対象者の状態も把握しやすくなります。
作成した手順は判定基準にもなるので、評価結果をもとにシステムを微調整(PDCAサイクルのAction(改善))することで、繰り返す度に技術の精度が高まります。
まとめ
リハビリの技術を向上するために、方法をルーティン化することの重要性についてご理解いただけたでしょうか?
流動的なリハビリをイメージしながら練習することも重要ですが、まずは固定化できるリハビリをシステム化することで毎日の臨床で精度を高めてみてはどうかと思います。