徒手療法やハンドリング技術の向上には、虫様筋握りの習得が必須ですが、習得に苦労されている方は多いのではないでしょうか?

「意識しているのに、どうしても指先で持ってしまう」

「患者様を持つときに力んでしまう」

このように感じることは少なくありません。

私は、日常生活で正しくものを持てない状態で、リハビリ中にだけ患者様を正しく持つことは難しいと考えています。

私たちは、物を持つときに手の機能に応じた持ち方を無意識に選択しています。

つまり、日常の持ち方が、臨床のハンドリングを作っていると言えます。

この記事では、虫様筋握りの習得につながる日用品の機能的な持ち方についてお伝えします。

虫様筋握りとは

対象者を持つ際は、虫様筋が働きやすい手の形を作ることが重要です。

基本となるポイントは次の通りです。

  • 手掌(特に尺側)をしっかり当てる
  • MP関節:屈曲位
  • IP関節:伸展位
  • 手関節:中間位

この手の形は、虫様筋が最も働きやすい肢位とされています。

虫様筋が働くことで、

  • 把持の安定
  • 不必要な力みの軽減
  • 繊細な圧調整

が可能になります。

結果として、「強く持たなくても安定する手」を作ることができます。

虫様筋が働きにくい持ち方の特徴

まずは、うまくいかない持ち方を知ることが重要です。

以下のような特徴がある場合は、持ち方を見直すことをおすすめします。

手関節が尺屈している

  • 手掌全体で押し込むような持ち方
  • 小指側に手が崩れている
  • 指が閉じている

この状態では、虫様筋よりも長指屈筋への依存が強くなります。

結果として、

  • 力みやすい
  • 疲れやすい
  • 微調整ができない

といった問題が起きやすくなります。

指尖で押さえている

  • 示指〜小指が閉じている
  • 指先だけが接触している
  • 母指IP関節が屈曲している

特に多いのが、母指で押さえつける持ち方です。

この持ち方は、「つまむ」動きが主体になり、支える手が作れなくなります。

なぜ日用品が重要なのか

虫様筋握りは、特別な場面で作るものではありません。

日常生活の中で繰り返される持ち方が、そのまま手の使い方として定着します。

例えば、

  • ペットボトル
  • スマートフォン
  • 車のハンドル

これらは、

  • 持つ頻度が多い
  • 持続時間が長い

という特徴があります。

つまり、日用品の持ち方が、手の機能を作っていると言っても過言ではありません。

日用品の持ち方(実践編)

今回は、持つ頻度が多く、持続時間が長い物を中心に紹介します。

ペットボトルの持ち方

日常生活の中で、最も練習に適した物の一つです。

ポイント

  • 手関節:中間位
  • 示指〜小指:軽く外転
  • 4指のDIP関節〜指腹を接触
  • 母指:IP関節伸展位
  • 母指は軽く添える程度

よくある間違い

  • 指先だけで持つ
  • 母指で強く押さえる
  • 小指が浮く

このような場合は、
「支える」ではなく「つまむ」動きになっています。

スマホの持ち方

現代では、最も長時間持つ物の一つです。

そのため、影響は非常に大きいと考えられます。

ポイント

  • 手関節:中間位
  • 母指球+中指〜小指で軽く挟む
  • 示指:MP軽度屈曲
  • IP伸展位で全体を添える

評価視点

スマホの持ち方を見ると、

  • 手関節の位置
  • 指の外転
  • 母指の使い方

が一目で分かります。

手の機能評価の材料としても非常に有用です。

車のハンドルの持ち方

ハンドルは前方に傾斜しているため、崩れやすい環境にあります。

そのため、良い練習対象になります。

ポイント

  • 手関節:中間位
  • 手掌尺側を当てる
  • 手掌橈側は当てない
  • 環指・小指で握る
  • 示指・中指は外転
  • 母指は軽く添える

注意点

手掌全体で握ると、

  • 手関節が尺屈
  • 指が閉じる

といった崩れが起きやすくなります。

さらにおすすめの日用品

以下の物も、練習として非常に有効です。

コップ

  • 支える感覚を作りやすい
  • 指腹接触の練習になる

茶わん

  • 手掌尺側の使用が必要
  • 日本の生活に適した練習になる

歯ブラシ

  • 母指IP伸展の練習になる
  • 過剰なつまみ動作を防げる

上達のための練習方法

単に持つだけでは、変化は起きにくいです。

次のような段階的練習をおすすめします。

ステップ1:形を作る

物を持つ前に、

  • MP屈曲
  • IP伸展

の形を作ります。

「手の形を作ってから持つ」ことが重要です。

ステップ2:接触を感じる

持ったときに、

  • どこが当たっているか
  • どこが浮いているか

を感じます。

特に、手掌尺側の接触を意識します。

ステップ3:力を抜く

最後に、必要最小限の力に調整します。

この段階で、虫様筋の働きが活きてきます。

力を抜くと物が滑り落ちそうな場合、
虫様筋の働きが不十分なため、手掌が物に馴染んでいないと考えられます。

臨床への応用

セラピスト自身の手の使い方は、患者様の手の評価・治療にも直結します。

例えば、

患者様が

  • 指先でつまむ
  • 母指で押さえる

場合、その原因は

  • 手関節位置
  • MP関節制御
  • 尺側支持不足

にあることが少なくありません。

つまり、自分の手が理解できているほど、評価の精度が上がります。

まとめ

虫様筋握りは、筋力ではなく使い方で安定する特徴があります。

そのため、日常生活の持ち方を見直すことが、最も確実な練習になります。

今回紹介したもの以外にも、

  • コップ
  • 茶わん
  • 歯ブラシ

など、様々な日用品があります。

ぜひ日常生活の中で、「どう持っているか」を観察してみてください。

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