ROMエクササイズなどで対象者に触れる際、虫様筋握りが手の構えの基本と言われていますが、正しいフォームを作るのはなかなか難しいように思います。
「アプローチの効果が感じられない」
「正しくできているのかわからない」
と悩んでいる方が多いのではないでしょうか?
手の形だけではなく、どうすれば虫様筋が働くかを知ると正しいフォームを作ることができるかもしれません。
今回は手のメカニズムと実際の手の使い方について、私の考え方をお伝えしたいと思います。
目次
虫様筋握りについて
虫様筋握りとは
対象者の身体に触れる際は、虫様筋が働きやすいように手掌をしっかり当てて把持します。
手の形はMP関節屈曲位、IP関節伸展位で虫様筋が働きやすくなると言われてます。
虫様筋握り(横) 虫様筋握り(正面)
私自身は手内在筋が優位に働くように手を使うことだと解釈しています。
①対象者の身体の大きい部分
MP関節屈曲位、IP関節伸展位、手指外転位で手掌全体を使って把持する。(大きいボールを持つような形)
②対象者の身体の細い部分
MP関節屈曲位、IP関節伸展位で手掌のしわ(特に尺側)で挟むように把持する。
手掌の構造
①手掌腱膜
- 手掌の中央にある強靭な腱膜で、手関節(長掌筋の停止)から第2~5指に向かって扇状に広がる
- 手掌の皮膚と固く癒合しており、物を掴むときに手掌の皮膚がずれないように支える
②虫様筋(起始:深指屈筋腱、停止:指背腱膜)
- 第2~5指MP関節を屈曲、DIP・PIP関節を伸展する
- 深指屈筋と共同してDIPの動きを制御する
- 筋紡錘が多く、手のセンサーの役割を持つとも言われている
手内在筋と手外在筋
①手内在筋:手関節をまたがない筋肉
- 虫様筋
- 背側・掌側骨間筋
- 母指球筋(短母指外転筋、短母指屈筋、母指対立筋、母指内転筋)
- 小指球筋(小指外転筋、短小指屈筋、小指対立筋、短掌筋)
②手外在筋:手関節をまたぐ筋肉
- 浅・深指屈筋
- 長母指屈筋
- 長・短母指伸筋
- 長母指外転筋
- 総指伸筋
- 示指・小指伸筋
手を使うときは内在筋と外在筋、橈側と尺側・背側と掌側の筋が相互に作用します。
手関節が手掌に与える影響
手関節の向きや動きにより、手関節をまたぐ手外在筋や長掌筋の緊張が変わります。
①手関節背屈位
- 軽度背屈位では手指屈筋群と手指伸筋群が協調して働き、手指屈筋群の張力効率を最適にするで把持しやすい
- 過度な背屈位では長掌筋や手指屈筋群が伸張され、把持が難しくなる
②手関節掌屈位
- 浅・深指屈筋が掌屈に作用、手指伸筋群が伸張されることで、指先に力が入りやすく把持が難しくなる
- 長掌筋の緊張にともない手掌の皮膚と手掌腱膜が緊張し把持が難しくなる
手関節中間位または軽度背屈位が保持できるように手を使うことで、虫様筋の働きが持続すると考えられます。
虫様筋握りのポイント
対象者へ緊張を与えない工夫
①セラピストの緊張緩和
- 対象者に触れる前に指をストレッチする
- 正しい姿勢で手が力まないようにする
- 両手をバランスよく使用する
- 身体を使用して誘導する

②対象者の緊張緩和
- 声掛けをしてから触れたり動かしたりする
- 痛みやスパズムに注意する
- 手掌(特に尺側)をしっかり当てる
- 呼吸に合わせて丁寧に動かす

※手掌が硬いと特に小指球の感覚が薄く、手が滑る感じがするので母指球、指先、指の付け根といった硬い部分で押さえつけたくなります。(点で当てる)
虫様筋握りのキープ
運動にともない「手が滑る」「指に力が入る」ということが多く見られます。
よくある癖と正しい方法を比較しながら虫様筋握りをキープする方法を理解していただけたらと思います。
①股関節屈曲

- 手関節中間位または背屈位
- 対象者の足底から手掌が離れない

- 手関節掌屈位で対象者の足部を抱えて動かす
- 手掌よりも前腕が対象者の足底に当たる
②膝関節伸展

- 手関節軽度背屈位から中間位
- 手掌が対象者の足底から離れない

- 膝関節伸展とともに手関節が掌屈
- 手掌が対象者の足底から離れ、指先で足部を把持する
③肩関節外転

- 手関節中間位から軽度背屈位
- 最後まで対象者の上腕を支える

- 肩関節外転90度を超えたあたりから手関節が背屈
- 指や手掌の硬い部分で対象者の上腕を押す
毎日の臨床で常に正しいフォームを意識して手を使うことが技術UPの近道になるように思います。