橈骨遠位端骨折のリハビリ|固定後に自宅でできる運動
転倒して手をついたあと、
- 「ギプスを外したのに手首が動かない」
- 「手をつくと痛い」
- 「手のひらを上に向けにくい」
- 「ドアノブが回しにくい」
このような症状で困っていませんか?
橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)は、手首に多い代表的な骨折です。
特に高齢者では転倒をきっかけに起こりやすく、固定後に手首の硬さや筋力低下が長引くことも少なくありません。
また、
- 手首が反らない
- 捻れない
- 小指側が痛い
- 握力が戻らない
- 日常生活で使いにくい
といった悩みにつながることもあります。
この記事では、
- 橈骨遠位端骨折後に手首が動かしにくくなる原因
- 可動域制限に関係する筋肉
- 固定後に弱くなりやすい筋肉
- 背屈・回外制限への運動
- 小指側痛との関係
について、リハビリの視点からわかりやすく解説します。
橈骨遠位端骨折とは
橈骨遠位端骨折は、手首に近い部分の橈骨が折れる骨折です。

特に、
- 転倒して手をついた
- 手首が腫れている
- 動かすと痛い
- 手首が変形している
といった症状が特徴です。
高齢者では骨粗しょう症を背景に軽い転倒でも起こりやすく、若年者ではスポーツや交通事故など強い外力で発生することがあります。
治療は、
- ギプス固定
- シーネ固定
- 装具固定
- プレート固定などの手術
が行われ、固定期間は一般的に約4〜6週間程度が目安になります。
橈骨遠位端骨折後に多い悩み
固定後は骨がついても、手首の動きが十分に戻らないことがあります。
特に多いのは、
- ドアノブが回しにくい
- ペットボトルが開けにくい
- 床に手をつけない
- 洗顔しにくい
- 荷物を持つと痛い
- 小指側が痛い
といった日常生活での困りごとです。
なぜ手首が動かしにくくなる?
アライメントの崩れ
橈骨遠位端骨折では、骨の並び(アライメント)が変化すると手首の動きに影響が出ます。
特に、
- 橈骨短縮
- 掌側傾斜の変化
- 関節面のズレ
が起こると、
- 背屈(反らす動き)
- 回外(手のひらを上に向ける動き)
が制限されやすくなります。
また、橈骨が短くなることで相対的に尺骨が長くなり、小指側への負担が増えることがあります。
これが、
- 尺骨突き上げ症候群
- TFCC損傷による痛み
につながる場合があります。
硬くなりやすい筋肉
固定期間中は手首を動かさないため、前腕や肩周囲の筋肉が硬くなりやすくなります。
背屈制限に関係しやすい筋肉

手関節屈筋群
手首を曲げる筋肉です。
硬くなると手首を反らしにくくなります。
回外制限に関係しやすい筋肉
円回内筋
前腕を内側へ捻る筋肉です。
硬くなると前腕を回内方向へ引っ張りやすくなります。
肩・肘の可動域制限に関係しやすい筋肉

大円筋
肩を内側へ引き込みやすく、肩の動きを制限することがあります。
広背筋
腕を下げる方向へ働く筋肉で、硬くなると腕を上げにくくなることがあります。
上腕二頭筋
肘を曲げる筋肉です。
固定期間中に短縮すると、肘が伸びにくくなることがあります。
固定中は、
- 肩を動かさない
- 肘を曲げたままになる
- 三角巾姿勢が続く
ことで、肩や肘まで硬くなることがあります。
特に高齢者では拘縮が残りやすいため注意が必要です。
弱りやすい筋肉
固定期間中は筋力低下も起こります。
握力低下に関係する筋肉

指屈筋群
握る力が低下しやすくなります。
母指球筋(特に短母趾外転筋、母趾対立筋)
つまむ動作や細かい作業に影響します。
固定期間中は、握る筋肉と伸ばす筋肉のバランスが崩れやすく、指が動かしにくくなることがあります。
手指拘縮や筋肉のアンバランスについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
手をつく動きに関係する筋肉

手関節伸筋群
手をつく動作に重要です。
回外筋群(上腕二頭筋、回外筋)
前腕を外へ捻る力に関係します。
これらが弱くなることで、
- 床に手をつけない
- 起き上がりで支えにくい
- 体重をかけるのが怖い
といった状態につながります。
肩・肘の筋力低下に関係する筋肉

三角筋
腕を持ち上げる力が低下しやすくなります。
上腕二頭筋
物を持ち上げる動作に影響しやすくなります。
腕を使わない期間が続くことで、肩や肘の筋力も低下しやすくなります。
その結果、
- 腕を持ち上げにくい
- 洗濯物を干しにくい
- 物を持つと疲れやすい
といった日常生活への影響が出ることがあります。
固定中の基本的なリハビリの流れ
橈骨遠位端骨折では、骨が安定するまで数週間の固定が必要になります。
固定中は「安静」が基本ですが、まったく動かさないと、指や肩が硬くなることがあります。
そのため、固定している間も、動かせる部分は早めに動かすことが大切です。
受傷〜1週間頃
目的
- 痛みや腫れを抑える
- 指が固まるのを防ぐ
行うこと
- 手を心臓より高く上げる
- 指の曲げ伸ばし
- 肘や肩を軽く動かす
ポイント
腫れが強い時期は、無理に動かしすぎないことが大切です。
1〜3週間頃
目的
- 指の動きを保つ
- むくみを減らす
- 腕を使わなくなることを防ぐ
行うこと
- グーパー運動
- 指を1本ずつ動かす練習
- 肩や肘の体操
ポイント
「痛いから動かさない」が続くと、固定後に手首が硬くなりやすくなります。
3〜5週間頃
目的
- 固定除去後に動きやすくする
- 日常生活への準備
行うこと
- 指を細かく動かす練習
- 軽い家事動作
- 肩や腕の運動
ポイント
この時期は、握力低下や肩こりが起こりやすくなります。
骨の状態を確認しながら、医師の判断でギプス除去となります。
固定中に大切な3つの運動
- 指を動かす
- 手を上げる
- 肩・肘を動かす
ギプス固定後に起こりやすい症状
ギプス固定後は、手首や前腕を動かさない期間が続くため、関節や筋肉が硬くなりやすくなります。
特に起こりやすいのは、
- 手首が硬い
- 手首を反らしにくい
- 手のひらを上に向けにくい
- 握力が低下する
- むくみが残る
といった症状です。
そのため、固定後は可動域練習や生活動作練習が重要になります。
固定後におすすめの自主トレーニング
① 手首のストレッチ(手首を反らす)
橈骨遠位端骨折後は、特に「手首を反らす動き」が硬くなりやすくなります。

方法
- 床やテーブルに手を置く
- ゆっくり体重をかけて手首を反らす
- 数秒保持して戻すを繰り返す
ポイント
- 最初は小さい範囲でOK
- 強い痛みを我慢しすぎない
- 反動をつけない
背屈が改善すると、
- 床に手をつく
- 起き上がる
- 体を支える
動作がしやすくなります。
② 前腕の回外運動(手のひらを上に向ける運動)
骨折後は前腕を捻る動きも制限されやすくなります。

方法
- 肘を体につける
- 手のひらを上へ向ける
- 手のひらを下に向けるをゆっくり繰り返す
ポイント
- 肩が代償しすぎないよう注意する
- 無理に捻らない
回外が改善すると、
- 洗顔
- お椀を持つ
- ドアノブを回す
動作がしやすくなります。
③ タオル握り運動
固定後は握力低下も起こりやすくなります。

方法
- タオルを軽く握る
- 数秒保持する
- ゆっくり力を抜くを繰り返す
ポイント
- 強く握りすぎない
- 疲労感が強い場合は休憩する
握力が改善すると、
- ペットボトルを持つ
- 荷物を持つ
- 家事動作
が行いやすくなります。
小指側の痛みが続く場合
骨折後に、
- 小指側が痛い
- ドアノブで痛い
- 重い物を持つと痛い
- 手をつくと痛い
場合は、
- TFCC損傷
- 尺骨突き上げ症候群
などが関係していることがあります。
無理に動かし続けると症状が長引くこともあるため、痛みが強い場合は再評価が必要です。
日常生活での注意点
痛みへの恐怖で使わなくなることもある
骨折後は、「また痛くなるかも」
という不安から、必要以上に手を使わなくなることがあります。
しかし、まったく使わない状態が続くと、
- 可動域制限
- 筋力低下
- 浮腫
- 動かしにくさ
が長引きやすくなります。
痛みの少ない範囲で少しずつ使うことが大切です。
転倒予防も重要
特に高齢者では再骨折予防が重要になります。
- 段差を減らす
- 滑りやすい場所を避ける
- 夜間の照明をつける
など環境調整も大切です。
また、
- 立ち上がりにくい
- ふらつきやすい
- 歩幅が小さい
場合は、下肢筋力やバランス能力低下が関係していることもあります。
無理のない範囲で、
- ウォーキング
- 立ち座り運動
- バランス練習
を取り入れることも重要です。
こんな場合は早めに相談
- 強いしびれがある
- 指が動かしにくい
- 固定後も痛みが強い
- 小指側の痛みが続く
- 指が異常に腫れる
- 可動域が極端に改善しない
このような場合は、再評価が必要なことがあります。
まとめ
橈骨遠位端骨折後は、骨が治っても、すぐに手首が元通りになるとは限りません。
固定期間の影響で、
- 手首の硬さ
- 筋力低下
- 動かしにくさ
- 痛みへの不安
が残ることがあります。
特に、
- 背屈制限
- 回外制限
- 握力低下
は日常生活へ大きく影響しやすいため、段階的な運動が重要になります。
無理に動かしすぎると痛みが長引く場合もあるため、主治医やリハビリスタッフの指示を確認しながら進めましょう。
