「歩くとふらつく」
「真っすぐ歩けない」
「コップを取ろうとすると手が震える」

このような症状があると、「筋力が弱くなったのかな?」と思う方も多いかもしれません。

しかし実際には、筋力ではなく身体の動きを調整する機能が低下している場合があります。その代表的な症状が「運動失調」です。

この記事では、運動失調とはどのような状態なのか、原因となる病気やリハビリの考え方についてわかりやすく解説します。

運動失調とは?

運動失調とは、筋力は保たれているにもかかわらず、身体を思った通りに動かすことが難しくなる状態です。

例えば、

  • 手を伸ばしたときに目標を通り越してしまう
  • コップを持つと手が震える
  • 歩くと左右にふらつく
  • バランスが取りにくい

といった症状がみられます。

麻痺のように「動かせない」のではなく、「うまく調整できない」ことが特徴です。

どんな病気で起こるの?

運動失調はさまざまな病気でみられます。

代表的なものとして、

  • 小脳梗塞
  • 小脳出血
  • 脊髄小脳変性症
  • 多系統萎縮症
  • 頭部外傷
  • 脳腫瘍

などがあります。

症状が急に現れた場合は、脳卒中の可能性もあるため注意が必要です。

なぜ運動失調が起こるの?

運動失調は、主に小脳の障害によって起こりますが、小脳と身体をつなぐ神経経路や感覚を伝える神経の障害でも起こることがあります。

小脳の役割

小脳は脳の後ろ側にあり、

  • 動きの調整
  • バランスの維持
  • 力加減の調整
  • 姿勢の安定

などを担当しています。

私たちが普段、意識しなくてもスムーズに歩いたり、手を伸ばしたりできるのは、小脳が常に身体の動きを調整しているためです。

しかし小脳が障害されると、動作のタイミングや力加減が乱れ、運動失調が生じます。

運動失調には、小脳の障害によるものだけでなく、足の位置や身体の感覚を脳へ伝える神経の障害によって起こるものもあります。

そのため、同じ「ふらつき」でも原因となる病気や障害部位はさまざまです。

運動失調でみられる主な症状

歩行時のふらつき

最も目立つ症状の一つです。

  • 左右に揺れる
  • 真っすぐ歩けない
  • 足を広げて歩く
  • 方向転換でふらつく

といった特徴があります。

酔っぱらった人のような歩き方に見えることもあります。

手の震え(企図振戦)

運動失調では、何かをしようとしたときに震えが強くなることがあります。

安静時よりも、動作中に目立つのが特徴です。

例えば、

  • コップを持つ
  • 箸を使う
  • ボタンを留める
  • 字を書く

といった場面で症状が現れます。

距離感がつかみにくい(測定異常)

目標物に向かって手を伸ばしたときに、

  • 行き過ぎる
  • 手前で止まる
  • 何度も修正する

ことがあります。

話し方の変化

小脳の障害では、発声に関わる筋肉の調整も難しくなります。

そのため、

  • ろれつが回りにくい
  • 話し方が不自然になる
  • 声の強弱がつけにくい

といった症状がみられることがあります。

リハビリで大切な考え方

正確な動作を繰り返す

運動失調では、筋力を鍛えるだけでは十分な改善が得られないことがあります。

大切なのは、身体を正確にコントロールする練習です。

例えば、

  • 決められた場所に手を置く
  • 目標物に向かってゆっくり手を伸ばす
  • 一定のリズムで動く

といった練習を繰り返します。

「たくさん動く」ことよりも、「正確に動く」ことを重視します。

安全を確保しながら立つ・歩く練習を行う

運動失調ではふらつきが強く、転倒の危険性が高くなります。

そのためリハビリでは、

  • 両手を支えながら立つ練習
  • 介助を受けながら歩く練習
  • 平行棒内での歩行練習
  • 手すりを利用した立ち座り練習

など、安全を確保した状態で反復練習を行います。

繰り返し練習することで、身体の動かし方を学習していくことが期待されます。

感覚情報を利用する

運動失調では、身体から得られる感覚情報を利用して、動きを調整する働きが低下しています。

そのためリハビリでは、身体からの感覚情報を意識しながら練習を行います。

例えば、

  • 足の裏で床を踏む感覚を感じる
  • 座ったときに左右のお尻へかかる体重を感じる
  • 手で支えた場所から伝わる圧力を感じる

といった練習です。

身体からの感覚情報を利用することで、自分の姿勢や動きを修正しやすくなります。

疲れすぎないことも大切

運動失調では、疲労によってふらつきや手の震えが強くなることがあります。

そのため、

  • 適度に休憩を入れる
  • 集中できる時間で練習する
  • 疲れた状態で無理をしない

ことも重要です。

運動失調と体幹機能低下は見分けることが大切

運動失調によるふらつきは、体幹機能の低下によるふらつきと見た目が似ていることがあります。

しかし、

  • 身体を支えられないのか
  • 動きを制御できないのか

によって、リハビリの考え方は異なります。

運動失調と体幹機能低下の違いや評価の視点については、こちらの記事で詳しく解説しています。

ご家族ができるサポート

運動失調のある方は、思うように身体を動かせず、もどかしさや不安を感じていることがあります。

そのような中で、ご家族の関わりは大きな支えになります。

例えば、

  • 安全に動ける環境を整える
  • 焦らず見守る
  • 危険な場面ではしっかり支える
  • できたことを一緒に喜ぶ

といった関わり方が役立ちます。

運動失調では、バランスを取ろうとする経験そのものが、身体の動かし方を学習する機会になります。

「常に介助する」ではなく、必要な場面で適切に介助できるよう、医療従事者と情報を共有することも大切です。

ご本人が安心して取り組める環境は、リハビリの継続や意欲の向上につながります。

運動失調は改善する?

運動失調の改善の程度は原因となる病気によって異なります。

脳卒中後の運動失調では、適切なリハビリによって動作の安定性が向上することがあります。

一方で進行性の病気では、症状の進行を遅らせたり、生活しやすい方法を身につけたりすることが重要になります。

いずれの場合も、状態に合わせて継続的に取り組むことが大切です。

まとめ

運動失調とは、筋力低下ではなく身体の動きを調整する機能が障害された状態です。

主な症状として、

  • 歩行時のふらつき
  • 手の震え
  • バランス障害
  • 細かい作業のしづらさ

などがみられます。

小脳の障害によって起こることが多く、リハビリでは正確な動作練習や感覚情報を活用した運動が重要になります。

ふらつきや手の震えでお困りの方は、一人ひとりの状態に合わせたリハビリを継続することが改善への第一歩となります。

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