「伝えたことをやってもらえない」

「やる気を感じない」

リハビリを行う中で、このように感じたことはないでしょうか。

対象者の課題をセラピストが決めた場合、リハビリが受け身になりやすく、意欲が上がりにくいことがあります。

一方で、自分自身で目標を決めた場合、達成スピードが大きく向上するという研究報告もあり、主体性はリハビリの成果に大きく影響します。

クライエント中心でリハビリを進めるためのツールとして知られているのが、
カナダ作業遂行測定(COPM)です。

COPMは評価として使用されることが多いですが、実は主体性を引き出すコミュニケーションツールとしても非常に有効です。

この記事では、COPMの基本を整理しながら、主体性を引き出すコミュニケーションの視点で活用方法を考えてみたいと思います。

COPMについて

COPM(Canadian Occupational Performance Measure:カナダ作業遂行測定)とは、

日常生活の中で本人もしくは家族が主観的に重要と感じている作業課題を選択し、

  • 遂行度(どれぐらいできているか)
  • 満足度(どれぐらい満足しているか)

を評価する方法です。

COPMは単なる機能評価ではなく、

「元気になった」
「できることが増えた」
「生活に満足できるようになった」

といった、生活の質(QOL)の変化を捉えることを目的に開発されました。

COPMの最大の特徴は、対象者自身が課題を決めることです。

  • したいこと
  • する必要があること
  • 周囲から期待されていること

これらを対象者自身が整理し、その成果を自ら評価していきます。

この過程そのものが、

  • 問題解決能力
  • 自己認識
  • 意欲

を高めることにつながります。

COPMの評価方法

COPMは以下の流れで進めていきます。

①問題の発見

セルフケア、仕事、家事、レジャーなどの生活場面の中で、
本人や家族にとって重要な作業課題をできるだけ多く挙げていきます。

②重要度の評価

挙げられた課題について、重要度を10段階で評価し、優先順位を決めます。

③遂行度と満足度の評価

重要度の高い課題を5つ以内に絞り

  • 遂行度
  • 満足度

をそれぞれ10段階で評価します。

④遂行度と満足度の再評価

リハビリを進めながら、同じ課題について再評価を行い、
変化を見える化していきます。

COPMを活用した主体性を引き出すコミュニケーション

ここからは、COPMの流れに沿って、主体性を高めるコミュニケーションについて考えてみたいと思います。

①問題の発見:気づきを引き出す質問

対象者自身が課題に気づき、それを言葉にできるような配慮が重要になります。

まずは、オープンな質問から始めることが大切です。

質問例

  • 「普段の生活ではどのようなことでお困りですか?」
  • 「体のどこの部分が気になっていますか?」
  • 「以前と比べて困ることはありますか?」

もし課題が出ない場合は、具体的な生活場面を提示していきます。

具体的な質問例

  • 「トイレに行くときはどうされていますか?」
  • 「歩くときに気になることはないですか?」
  • 「お風呂はどのようにされていますか?」

また、病気や認知機能の影響により気づきが得られない場合は、

  • ご家族
  • 介護者

にも質問を行います。

悪い例

「歩くの難しいですよね?」

このように、セラピストが課題を決めてしまう質問は避けたいところです。

②重要度の評価:本当に大切な課題を選ぶ

重要度の高い動作は、ICFでいうところの

  • 活動
  • 参加

に相当し、対象者のニードそのものになります。

特に注目したいのは、

  • 頻度が多い動作
  • 本人が重視している動作

です。

セラピストから見るとできているように見えても、
本人は

「思うようにできない」
「以前のようにできない」

と感じていることは少なくありません。

頻度が高い動作や重視している動作が改善すると、

  • 成功体験が増える
  • 活動量が増える
  • 意欲が高まる

といった好循環が生まれやすくなります。

悪い例

「大丈夫です。十分できています」

これは、セラピストの満足度で評価してしまう例です。

重要なのは、本人がどう感じているかです。

③遂行度と満足度の評価:状態を言語化する

重要な課題について、「どのようにできているか」を細かく言語化していきます。

質問例

  • 元気なときと比べてどうですか?
  • 力の入り方はどう感じますか?
  • 左右の違いはありますか?
  • 動作のどんなところが難しいですか?
  • どうなったら楽にできそうですか?
  • 転倒などの不安はありますか?

課題への気づきが詳細になるほど、

  • 自身の状態を理解する
  • 注意深く動作を行う

ようになっていきます。

悪い例

セラピストの主観のみで評価し、結果を共有しないことです。

評価は、対象者と共有してこそ意味があります。

④遂行度と満足度の再評価:マンネリを防ぐ

毎回、

  • 「どれぐらいできてきましたか?」
  • 「どれぐらい納得できていますか?」

と問いかけることは、

  • 意欲の向上
  • リハビリのマンネリ化防止
  • 自己認識の向上

につながります。

主体性が高まると、質問をしなくても対象者から課題を話してくれるようになることもあります。

悪い例

「できた?できなかった?」という2択だけの質問です。

これでは、気づきを深める機会が減ってしまいます。

【症例イメージ】COPMで主体性が高まった一例

症例:70代女性、脳卒中後の片麻痺

セラピスト側は
「歩行の安定性向上」を主な目標として考えていました。

しかしCOPMを実施すると、本人から出てきた課題は、
「洗濯物を干したい」でした。

重要度:10
遂行度:3
満足度:2

この課題に対して、

  • 立位バランス
  • 上肢操作
  • 屋外移動

を関連づけながら介入を進めた結果、洗濯動作が可能となり、

遂行度:8
満足度:9

へと改善しました。

その後、本人から「次は買い物に行きたい」という新しい目標が自然に出てくるようになりました。

このように、対象者自身が決めた課題は、次の行動につながりやすいという特徴があります。

まとめ

目的意識や意欲を考えると、対象者主体でリハビリを進めることは非常に重要です。

COPMは単なる評価ではなく、

  • 気づきを引き出す
  • 課題を共有する
  • 変化を見える化する

という、主体性を高めるコミュニケーションツールでもあります。

もし、

  • リハビリが受け身になっている
  • 意欲が上がりにくい
  • 目標設定に悩んでいる

と感じる場面があれば、COPMを一度活用してみてください。

対象者の言葉から始まるリハビリは、想像以上に大きな変化を生むことがあります。

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