リハビリを進める上で、

身体機能と認知機能のどちらにも問題がある場合、
どちらからアプローチすべきか迷ったことはないでしょうか?

優先順位を誤ると、

  • 思うようにリハビリが進まない
  • 意欲が低下する
  • リハビリ拒否につながる

といった問題が起こることがあります。

特に、
「身体機能を改善すれば生活が良くなる」

と考えて身体面ばかりに注目してしまうと、生活に反映されないリハビリになってしまうことも少なくありません。

この記事では、リハビリの優先順位をどのように考えるかについて、私自身の考え方をお伝えしたいと思います。

リハビリの優先順位の考え方

リハビリの目的を考える際には、

「どうすれば対象者が主体的な生活を送れるようになるか?」

という視点を持つことが大切です。

主体的な生活につながる流れを段階的に整理すると、優先順位が見えやすくなります。

私が考える3つの優先順位

私がリハビリを進める際に意識している優先順位は、次の3段階です。

① 信頼関係の構築
② 意欲の向上
③ 身体機能の向上

実際の臨床では、これらは同時に進むことが多いですが、どこを主軸にするかを明確にしておくことが重要です。

まずは信頼関係を築き、
その上で意欲を引き出し、
身体機能の改善へとつなげていきます。

ADLの改善を急ぐあまり、身体機能ばかりに目を向けてしまうと、生活の中で使われない機能になってしまうことがあります。

また、

  • 信頼関係が不十分
  • 本人の意欲に合わないリハビリ

こうした状況では、リハビリ拒否につながる可能性も高くなります。

①信頼関係の構築について

信頼関係とは何か

信頼関係とは、
安心して自分の思いを伝えられる関係であり、どんなことでも相談できる心理的な安全性が保たれている状態です。

同じ内容のリハビリでも、

  • 信頼している相手からの提案
  • 信頼が不十分な相手からの提案

では、受け止め方が大きく変わります。

そのため、信頼関係は
すべてのリハビリの土台になると考えています。

信頼関係構築に必要な関わり

信頼関係を築くためには、以下のような関わりが重要です。

  • 身体に触れる際の丁寧な声掛け
  • 本人の話を最後まで聞く姿勢
  • 目標について一緒に考える
  • 本人が納得した上でリハビリを進める
  • リハビリの意図や効果を分かりやすく説明する

ここで大切なのは、世間話をすることではなく、信頼できる専門職として関わることです。

信頼関係の観察ポイント

信頼関係は、次のような変化から感じ取ることができます。

  • 表情が柔らかくなる
  • 自発的な発話が増える
  • リハビリへの参加が積極的になる
  • 不安や悩みを話してくれる

こうした小さな変化を見逃さないことが大切です。

②意欲について

意欲低下の背景を考える

意欲が低下している場合、「頑張りましょう」と声をかけるだけでは十分ではありません。

意欲低下の原因がどこにあるのかを整理する必要があります。

主な原因は、

① 身体機能
② 認知機能
③ 精神機能

の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

身体機能による意欲低下

筋力低下や体力低下があると、

  • 身体が重く感じる
  • 動作が遅くなる
  • 疲れやすくなる

その結果、活動への消極性が生じやすくなります。

認知機能による意欲低下

認知機能の問題は、意欲に大きく影響します。

例えば、

● 意識障害
見当識が低下している状態では、目的を持った活動が難しくなります。

● 前頭葉機能低下
発動性の低下が起こり、自ら動こうとする力が弱くなることがあります。

また、脳の疲労により、頭が疲れやすい(神経疲労)という状態になることもあります。

精神機能による意欲低下

精神的な要因も重要です。

例えば、

● 障害受容が不十分
現状を受け入れる過程では、活動に前向きになれないことがあります。

● 希望が持てない
リハビリの意味や効果が見えない場合、意欲は低下しやすくなります。

このような場合は、信頼関係の再構築が必要になることもあります。

意欲の観察ポイント

意欲は、日常生活の過ごし方から読み取ることができます。

例えば、

  • 自分で身の回りのことを行っている
  • 自ら起きて過ごしている
  • 必要なときに援助を求められる
  • 楽しみにしている活動がある

リハビリ中だけでなく、日中の生活全体を観察することが大切です。

③身体機能向上について

信頼関係が築かれ、意欲が高まってくると、
身体機能訓練は生活に反映されやすくなります。

同じ運動であっても、

  • 意味を理解している
  • 目標が明確である

このような状態では、取り組み方が大きく変わります。

【症例イメージ】優先順位の見直しで変化した例

症例:70代男性、脳卒中後

当初は歩行能力の改善を目的に、筋力訓練を中心としたリハビリを実施していました。

しかし、

  • 表情が乏しい
  • 発話が少ない
  • リハビリを拒否する場面が増える

といった変化が見られました。

そこで、

  • 本人の不安を丁寧に聞く
  • 生活の中で大切にしていることを確認する

といった関わりを行ったところ、「家に帰って庭に出たい」という目標が明確になりました。

この目標に合わせて訓練内容を調整した結果、リハビリへの参加意欲が向上し、歩行距離も徐々に伸びていきました。

優先順位に迷ったときの確認ポイント

迷ったときは、次の3つを確認してみてください。

  • 本人は安心して関われているか
  • リハビリの意味を理解しているか
  • 本人自身の目標があるか

もし不足している部分があれば、身体機能より先に整えるべき要素があるかもしれません。

まとめ

私が考えるリハビリは、対象者自身が主体的な生活を送れるようになることを支援するものです。

そのためには、身体機能だけでなく、

  • 認知機能
  • 精神機能
  • 信頼関係

といった要素を総合的に評価することが重要です。

リハビリの優先順位に迷ったときは、

「何を鍛えるか」ではなく、
「どうすれば主体的な生活につながるか」

という視点で考えてみてください。

それが、生活につながるリハビリへの第一歩になると思います。

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