リハビリを進める上で身体機能、認知機能のどちらにも問題がある場合、どちらからアプローチするのが適切か悩むことはありませんか?
優先順位を誤ると思うようにリハビリが進まなことやリハビリ拒否の原因になることがあります。
今回はリハビリの優先順位について私の考え方をお伝えします。
リハビリの優先順位の考え方
リハビリ目的の優先順位は、「どうすれば患者様が主体的な生活になっていくか?」を段階付けることで見えてきます。
私が考える優先順位
- 信頼関係構築
- 意欲向上
- 身体機能向上
アプローチとしては同時進行になることが多いですが、主たる目的はこの3段階で考えます。
まずはパートナーとして信頼され、それから意欲が上がるように働きかけます。
ADL獲得を焦ると身体機能ばかりに着目してしまいますが、自発的な動きが少ないと生活には反映されません。
また信頼関係が構築が不十分であったり、意欲に合わないリハビリを実施しているとリハビリ拒否が起こる可能性も高くなります。
信頼関係構築について
信頼関係構築とは
互いに信頼し、どんなことでも相談できる心理的安全性が確保された関係です。
同じ内容のリハビリでも信頼関係が築けている場合、効果が3倍上がるという研究結果もあります。
信頼関係構築に必要なこと
- 介入時や身体に触れる際の適切な声掛け
- 本人の訴えを最後まで聞き、目標が明確になるまで対話する
- 本人が納得した上でリハビリを進めている
- 本人の訴えに対してリハビリの方向性や効果がある程度示せる
※世間話や機嫌を取ることで対人距離を縮めるのではなく、セラピストとして信用されるような関わりが重要です。
信頼関係構築の観察ポイント
- リハビリ中に笑顔が増える
- 自発的な発話が増える
- 積極的なリハビリへの参加
- 悩みや不安を自ら話してくれる
対人交流や対人距離は、個人や病状によっても異なるので、変化を見逃さないことが重要です。
意欲について
意欲低下の原因
意欲を向上させるには、ただ励ますのではなく、意欲低下の原因が身体機能、認知機能、精神機能のどれにあたるかを評価して適切に対応する必要があります。
1.身体機能
①筋力低下
筋力低下により身体が重く感じたり動作が緩慢になったりすると、疲れやすく活動に対して消極的になります。
2.認知機能
①意識障害
見当識が不十分などぼんやりしたような状態では、自ら目的を持って活動することが難しくなります。
②認知機能低下
意欲は前頭葉機能になるので、認知機能低下がある場合、意欲低下(発動性低下)も起こることがあります。
中枢神経の病変では脳血流の低下により頭が疲れやすく(神経疲労)なり、活動に消極的になることがあります。
3.精神機能
①障害受容ができていない
まだ前向きに活動に取り組むことが難しい状態です。受容できるまで本人のペースに合わせて待つことも大切です。
②リハビリが楽しくない、希望が持てない
セラピストが自分本位にリハビリを進めたり、リハビリの効果が感じられなかったりするとリハビリ参加に消極的になることがあります。
本人の訴えを聞くなど信頼関係の構築が必要です。
意欲の観察ポイント
日中どの程度主体的に生活できているかを身体機能を加味して考えます。
- 身の回りのことを自分で行っている
- 自ら起きて過ごしている
- 介助が必要な場合は自分からお願いする(依存的ではなく)
- 毎日楽しみにしている活動がある
リハビリ中は頑張っているように見えても、日中はほとんど臥床して過ごしているという場合は注意が必要です。
この場合、リハビリが日常生活に反映されていないか、リハビリが本人の意欲に合っていないかになると思います。
まとめ
私が考えるリハビリは、対象者自身で主体的な生活が送れるようになるためのサポートです。
どんな疾患でも身体機能だけでなく、認知機能や精神機能も評価しながら進めることが重要に思います。