虚弱高齢者や末期がんの方のリハビリを実施する際、食事量を気にしたことはありますか?
食欲低下が起こりやすい方へ介入する場合、摂取量を考慮せず運動を実施しても効果は上がりません。
今回は食事が運動に与える影響やリハビリに必要な食事量の評価、介入についてお伝えします。
セラピストに必要な食事の知識
食事が運動に与える影響
運動で効果を上げるには、筋肉を生成するための栄養素がきちんと取れているかが重要になります。
栄養不足で運動を実施しても筋力UPどころか、疲労やストレスの原因になります。
そのため、虚弱高齢者や末期がんの方のように食事量が減りやすい方の運動を行う場合は、運動前に食事の摂取量を確認しておく必要があります。
低栄養について
低栄養とは、カロリーとタンパク質が不足した状態のことです。
高齢になると食欲低下、口腔機能低下により食事量が減りやすく、高齢者の3割が低栄養状態にあると言われています。
低栄養状態
- 体重減少
- 筋肉量の低下
- 免疫機能低下
- 褥瘡などの皮膚のトラブル
- 骨が脆くなる
- 集中力・思考力の低下
- 意欲の低下
食事量の評価と介入について
- カロリー摂取量
- タンパク質の摂取量
タンパク質はカロリーが不足すると筋肉を分解してエネルギーに変えます。そのため、カロリー摂取を優先します。
カロリー摂取量の評価と介入
カロリーとは
人が活動するために必要なエネルギー量のことです。
カロリー摂取量=消費量が理想とされており、摂取量の方が多い場合は脂肪として蓄積されます。
1日に必要な摂取カロリー
18歳以上の成人が1日に必要なカロリー
=基礎代謝量×身体活動レベル
と言われていますが、正確に計算しなくてもある程度のカロリーが摂取できているかが分かれば良いかと思います。
〇70歳以上の1日に必要なカロリー
- 男性:1850~2200㎉
- 女性:1500~1750㎉
〇寝たきりの方の1日に必要なカロリー:体重×20㎉
カロリー摂取量の評価
- 1日3食食べているか?
- 1食の量が少なすぎないか?
上記に問題がありそうな場合、カロリー計算をしてみてはどうかと思います。
カロリー摂取の目安
- おにぎり1個200㎉
- 食パン1枚160㎉
- うどん1玉210㎉
- バナナ1本80㎉
- 魚の塩焼き150㎉
- 肉野菜炒め(100g)170㎉
カロリー摂取量を増やす介入
①食事での工夫
- 食欲がないときはなるべく好きなものを食べる
- 噛む力が弱い方は飲み込みやすい食材にする
- 1度に食べられない方は食事の回数を増やす
- 自分で作れない方は宅配サービスを利用する
②摂取量が明らかに不足している場合
医師に相談してエンシュアやラコールといった補助食品の使用を検討します。
※エンシュア・リキッド、ラコールは医療用医薬品なので保険適応です。
タンパク質の摂取量の評価と介入
タンパク質とは
人が生きていくために必要不可欠な栄養素で体の約60%が水分、約20%がタンパク質でできています。
タンパク質には筋肉、血液、皮膚、各臓器などを構成する働きがあります。
高齢者に限らず不足しやすい栄養素です。
1日に必要なたんぱく質の摂取量
体重1kgに対して1gが目安になります。
タンパク質摂取量の評価
- 朝食でタンパク質が取れているか?
- 麺類など炭水化物中心の食生活になっていないか?
上記に問題がありそうな場合、タンパク質摂取量を計算をしてみてはどうかと思います。
タンパク質摂取の目安
- 肉類・魚類の手のひらサイズ(約100g):約20g
- 牛乳・豆乳コップ1杯(約200ml):約7g
- 豆腐1/3丁:約7g
- 卵1個:約7g
- 納豆1パック:約8g
カロリー摂取量を増やす介入
①食事での工夫
- 牛乳、豆乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品は手軽に摂取しやすい
- 豆腐や納豆を1品つける
- サラダにささみやツナ缶を混ぜる
- うどんに肉や卵をトッピングする
②摂取量が明らかに不足している場合
医師に相談して
- EAA(必須アミノ酸)
- BAA(分岐鎖アミノ酸)
- プロテイン
などの補助食品の使用を検討しても良いかと思います。
まとめ
食事は運動を行うための身体の土台作りです。
虚弱高齢者や末期がんの方など低栄養の疑いがある方には、食事を見直し、摂取量にあったリハビリを行うことが望ましいと考えています。