今回は
「認知機能とは何か」
「どのようにリハビリを進めるのがよいのか」
について考えてみたいと思います。

一般的には
認知機能低下=記憶障害
と思われがちですが、記憶は認知機能の一部にすぎません。

認知機能を正しく理解することで、認知症や高次脳機能障害の方へのリハビリは、より円滑に進めることができると考えています。

認知機能について

認知機能とは

認知機能とは、理解・判断・論理などの知的機能のことを指します。

心理学的には、

  • 知覚
  • 注意
  • 記憶
  • 判断
  • 想像
  • 推理
  • 決定
  • 言語理解

といった様々な要素を包括して認知機能と呼ばれています。

つまり認知機能とは、
「物事を理解し、判断し、行動するための一連の働き」
と言えるでしょう。

認知機能低下の主な症状

認知機能が低下すると、次のような症状がみられます。

  • 記憶障害
  • 失語
  • 失行
  • 失認
  • 遂行機能障害

これらの症状は、

  • 脳卒中
  • 頭部外傷
  • 脳腫瘍
  • 認知症
  • 加齢

などによって起こります。

一般的に認知機能低下は高次脳機能障害と重なる概念ですが、加齢による変化が主体の場合は、認知症として扱われることが多い点が違いといえるでしょう。

認知過程について

認知過程とは、物事を認知し、処理するまでの一連の流れのことです。

一般的には、
知覚 → 注意 → 記憶 → 判断 → 言語・運動
の順で情報を処理すると考えられています。

認知過程の具体例

例えば「写真を見る」という行動でも、次のような過程が働いています。

① 写真に気付く
(視知覚)

② 写真に注意を向ける
(注意)

③ 写っているものを過去の経験と照合する
(記憶)

⑤ 写真を近づける、言葉にする
(運動・言語)

④ まだ見るか・言葉に出すかを決める
(判断)

このように、一つの行動の中には複数の認知機能が連動して働いています。

▶認知過程の流れをイメージしやすいように動画でも解説しています。

認知過程と脳機能

運動や発話を行う際には、脳のさまざまな領域がシステムとして働いています。

以下は主な対応関係です。

① 知覚

  • 視覚:後頭葉
  • 聴覚:側頭葉
  • 触覚:頭頂葉

② 注意

  • 注意を向ける:中脳上丘
  • 注意をそらす:頭頂葉
  • 持続・選択・配分・転換:大脳広範囲

③ 記憶

  • 記銘:海馬、前脳基底部
  • 保持:側頭葉
  • 想起:前脳基底部

④ 判断

  • 前頭前野

⑤ 言語・運動

  • 補足運動野
  • 前頭前野
  • 運動野

認知過程を観察するという考え方

リハビリを進める際には、
「できる・できない」だけを見るのではなく、
認知過程のどこで止まっているのか
を観察することが重要です。

例えば、

  • 気付いていないのか(知覚)
  • 注意が続かないのか(注意)
  • 思い出せないのか(記憶)
  • 行動を決められないのか(判断)

このように整理することで、問題点が明確になります。

認知過程を考慮したアプローチ

私は、課題を遂行することよりも、認知過程が働くことを重視することが重要だと考えています。

つまり、対象者自身の判断による運動や発話を引き出すことが重要になります。

セラピストが細かく指示を出しすぎると、判断する機会が減少し、認知過程が十分に働かない可能性があります。

アプローチの具体例①(発動性低下への介入)

発動性が低下している方に対しては、
感覚刺激から認知過程を順番に引き出すことを意識します。

例:ボールを使用した場合

① ボールを手に当てる
(触覚 → 知覚)

② 手に意識が向く
(注意)

③ ボールの感覚を思い出す
(記憶)

④ 「どんなボールだろう?」と興味が湧く
(判断)

⑤ 振って重さや大きさを確かめる
(運動)

ここで重要なのは、対象者自身の判断による行動が出ることです。

セラピストが思う反応である必要はありません。

症例:認知過程を用いた評価とアプローチ

ここでは、認知過程を用いた評価とアプローチが分かりやすい症例を紹介します。

症例:70代男性・脳梗塞後

主な症状

  • 発動性低下
  • 発話量の低下
  • 自発的な行動が少ない
  • 動作開始までに時間がかかる

認知過程からの評価

ボールを提示した際の反応を観察しました。

①触れると反応あり
→ 知覚は保たれている

②一瞬見るがすぐに視線が外れる
→ 注意の持続が難しい

③「これは?」と聞くと「ボール」と答える
→ 記憶は保たれている

④渡しても操作しない
→ 判断の段階で停滞している

⑤指示すると操作可能
→ 運動は可能

評価のまとめ
この症例では、判断(発動)の段階で流れが止まっていると考えられました。

実際のアプローチ

この症例では、判断を引き出す環境を整えることを重視しました。

①ボールを触れさせる
(知覚)

②しばらく待つ
(注意・判断)

③少し転がす
(興味を引き出す)

④自発的な操作を待つ

すると、自らボールを握る行動が出現しました。

この症例から分かること

この症例から分かることは、できない理由は能力の低下だけではないということです。

多くの場合、

  • 注意
  • 判断
  • 発動

のどこかで流れが止まっています。

そのため、
「できる・できない」ではなく
「どこで止まっているか」を考える

ことが重要になります。

まとめ

認知機能は、記憶だけではなく、複数の機能が連動して働くシステムです。

認知機能の改善を考える際には、ただ課題を行うのではなく、
対象者自身の判断によって行動することが重要になります。

認知過程を理解することで、

  • 問題点の整理
  • 適切な課題選択
  • 効果的な介入

が可能になると考えています。

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