寝返り・起き上がり介助で自立を促す|動作獲得につながる正しい誘導方法
寝返り・起き上がりといったベッド上での動作獲得は、寝たきりを防ぎ、主体的な生活につながる重要な基本動作です。
ベッド上動作が自立すると、
- 自分で体位を変えられる
- 起き上がって活動へ移れる
- 介助量の軽減につながる
といったメリットがあります。
動作獲得には、動作に必要な筋を使用する介助が重要です。
今回は、寝返り・起き上がり動作の自立や介助量軽減につながる介助方法について考えてみます。
正常な寝返り動作
まずは、正常な動作の流れを理解することが重要です。
正常な動作を理解することで、どこを介助すべきかが明確になります。
寝返り動作は、頸椎から順番に脊柱が回旋することで正常な筋活動が得られます。
この「上から下へ」の回旋が重要なポイントです。
1相:頸部回旋~肩甲骨外転とリーチ

- 頸部が回旋する
- 肩甲骨が外転する
- 対側へのリーチが起こる
寝返りのきっかけになる最も重要な相
2相:上部体幹回旋

(上側の肩が下側の肩の上に配列)
- 胸椎レベルの回旋
- 肩甲骨が前方へ移動する
上部体幹の回旋が不十分だと、寝返りは途中で止まりやすくなります。
3相:下部体幹回旋~側臥位

- 骨盤が回旋する
- 側臥位が完成する
下部体幹は「最後に回旋する」ことが重要です。
正常な起き上がり動作
起き上がり動作は、体幹屈曲により圧中心点が支持基底面内に収まることで容易に起き上がれます。
つまり、前方へ体重を移動させることがポイントです。
1相(屈曲相)

側臥位 → on elbow
- 側臥位で下肢を降ろす
- 肘で体幹を支える
体幹屈曲が最も重要な相
2相(伸展相)

on elbow → on hand → 座位
- 手をつく
- 肘を伸ばす
- 体幹が起き上がる
上肢支持が安定すると、座位が安定します。
動作獲得につながらない寝返り介助
介助者にとって楽な方法であっても、対象者の身体機能を使わない介助は動作獲得につながりません。
結果として、
- 介助量が減らない
- 将来的に介助が大変になる
可能性があります。
下肢から回旋を誘導する

例:
- 両膝を立てて側方へ倒す
- その後体幹回旋を誘導する
問題点:
- 脊柱の順序的回旋が起こらない
- 体幹筋の活動が低下する
寝返りの順序が逆になる
脊柱の回旋を誘導しない

例:
- 肩甲骨と骨盤を同時に持って向きを変える
問題点:
- 体幹回旋が起こらない
- 対象者が受動的になる
ただ向きを変えているだけになる
動作獲得につながらない起き上がり介助
頸部を介助者の肘に載せる

問題点:
- 体幹屈曲が妨げられる
筋活動が促通されない
側屈方向に持ち上げる

問題点:
- 体幹屈曲が起こらない
- 介助者の腰への負担が大きい
介助者にとっても危険
動作獲得につながる寝返り介助
ここでは、動作の流れに合わせた介助方法を解説します。
1相:頸部回旋~肩甲骨外転とリーチ

- 手首または上腕、肩甲骨を持つ
- 対側へのリーチを誘導する
(リーチが難しい場合は肩甲骨外転を誘導する)
リーチが寝返りのスイッチになります
2相:上部体幹回旋

- リーチができたら肩甲骨に手を添える
- 胸椎回旋を誘導する
介助のポイント:
- 介助者は手ではなく、足腰を使って身体を丸めて誘導する
- 対象者が床をゆっくり転がるように誘導する
介助者の腰痛予防にも重要
3相:下部体幹回旋

- 片手を骨盤へ持ち替える
- 骨盤回旋を誘導する
骨盤・下肢は最後に動かす
動作獲得につながる起き上がり介助
対象者の持ち方
手掌で対象者の首筋や後頭部を支える
首が側屈しないようするには、体幹屈曲を誘導する意識が重要です。
1相(屈曲相)

側臥位 → on elbow
- 膝裏を手前に引く
- 両下肢をベッドから降ろす
- 肘へ荷重がかかるよう誘導する
肘荷重ができるかが評価ポイント
2相(伸展相)


on elbow → on hand → 座位
- 手をつくよう誘導
- 肘伸展を促す
- 臀部位置を調整する
片側の大腿骨頭から坐骨・足底へと支持基底面を変化させる
動作獲得につなげる評価ポイント
寝返り評価
チェック項目:
- 頸部回旋ができているか
- リーチが出ているか
- 肩甲骨が動いているか
- 骨盤回旋が最後に起きているか
「順番」を見ることが重要
起き上がり評価
チェック項目:
- 体幹屈曲ができているか
- 肘荷重ができているか
- 手支持が安定しているか
- 座位が保持できるか
屈曲が出ないと起き上がれない
▶ 実際の動きは動画で分かりやすく解説しています。
よくある失敗と修正ポイント
失敗①:早く起こそうとしてしまう
問題:
- 対象者の筋が働かない
- 介助量が増える
修正:ゆっくり順番通りに誘導する
失敗②:対象者の反応を見ていない
問題:
- 筋活動が起きていない
- 過緊張や代償運動になる
修正:呼吸や筋緊張を感じながら介助する
失敗③:介助者が近づきすぎる
問題:
- 動作スペースがなくなる
- 体幹屈曲が出ない
修正:対象者の動作が可能な距離をあける
移乗介助につなげる視点
寝返り・起き上がりでみられる
- 体幹が起こせない
- 足に力が入りにくい
- 重心移動が苦手
といった特徴は、移乗動作にも大きく関係しています。
特に、
- ベッドから立ち上がれない
- お尻が浮かない
- 介助量が多くなる
といった場合は、寝返りや起き上がりでの動きづくりが重要になることがあります。
移乗介助でも、下肢や体幹を適切に使えるように誘導することで、介助量の軽減や自立支援につながります。
移乗介助の方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
寝返り・起き上がり動作に限らず、正常な動作を意識した介助は、
- 対象者の筋活動を促し
- 動作獲得につながり
- 介助量の軽減を可能にします。
また、正しい誘導は、
- 対象者の自立支援
- 介助者の身体負担軽減
の両方につながります。
日々の介助を「動かす」から「動きを引き出す」へ変えていくことが、動作自立への第一歩になると考えます。
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「いきなり独立は不安…」という方も、働き方を調整しながら準備を進める方法があります。

