「時間がなく、毎日同じような内容を書いてしまう。」
「書くことが多くてまとまらない。」
毎日のリハビリカルテをきちんと書けていますか?
カルテとは法律上の義務でもありますが、本来の目的は患者様の状態把握と検証、チームでの情報交換になるかと思います。
カルテの意味やポイントを抑えて他職種からみても分かりやすいものになれば、チームと患者様へ更に貢献できます。
今回はSOAPでのカルテの記載方法についてお伝えしたいと思います。
SOAPについて
SOAPとは
SOAPとは問題指向型システム(POS:Problem Oriented System)でのカルテ形式の一つです。
問題指向型システム(POS)とは患者様の問題を明確に捉え、その問題解決を論理的に進めていくためのシステムです。
問題指向型システム(POS)の目的は記録ではなく、患者様とその家族の問題解決を中心に質の高い診療やケアをチームで行うためのものとなっています。
SOAP記載の基本
- 正確性:事実や根拠に基づいて正しく記載する。
- 簡潔性:短く簡潔に記載し、長く入り組んだ文章にしない。接続詞を使用しない。
- 明確性:誰が読んでも理解できる言葉や文章にする。
各項目の記載事項
①S(subject):主観的情報
- 現病歴、既往歴
- 病前の機能、活動、参加について
- 個人因子、環境因子
- 本人の目標
- 本人、ご家族の主訴や愁訴
- アプローチに対する主観的な反応
②O(object):客観的情報
- 実施した評価方法や測定結果
- 実施した治療方法や指導
- 評価、治療での観察内容(考察はAで述べる)
③A(assessment):評価
- SとOに対する考察
- 問題点のリスト(優先順位)
- 具体的な目標設定
④P(plan):計画
- Aに基づいた治療計画
- 治療、指導方法の追加、変更
- 治療、指導方法の工夫
カルテの記載について
SOAP記載のポイント
患者様のQOL向上には、チームで同じ目標を共有する必要があります。
他職種が見ても向かう方向が理解できるように、分かりやすく前向きに記載することが重要です。
私は、PDCAサイクルを意識してカルテを記載することで、目標達成に向かいやすいと考えています。
①S(subject):主観的情報
- 目標や問題に対する訴えを必ず聴取する。
②O(object):客観的情報
- 主要な問題の量的評価、質的評価を記載する。
- 実施した内容は他職種が見ても分かるように記載する。
- PDCAサイクル(D):計画に基づいた評価、治療
③A(assessment):評価
- 5W1Hで目標設定する。
- PDCAサイクル(C):評価、分析
- PDCAサイクル(A):目標の微調整or方向転換
※セラピストが具体的に目標設定するとチームが機能しやすいように思います。
④P(plan):計画
- PDCAサイクル(P):治療計画、治療・指導方法の工夫or変更
※治療、指導方法が全く同じ内容を繰り返す場合は、目標を低めに再設定する必要があります。
SOAP記載例
初回介入時
S:50歳代女性、上腕二頭筋腱炎(発症後1ヶ月経過)。役割は主婦。主訴;肩の痛みを気にせず家事ができるようになりたい。愁訴;夜中に痛くて寝られないことがあります。実施後;少し肩が楽になったような気がします。
O:夜間P+、安静時P+、activeROM肩関節屈曲30°P+。肩関節の運動に先行して肩甲骨が挙上し、過剰な立ち直り反応も出現。臥位、座位ともに肩甲骨挙上・外転位の不良姿勢。#1ROMex(肩甲骨内外転、左肩関節屈曲)#2姿勢調節(臥位、座位)#3就寝時のポジショニング指導を実施。
A:臥位姿勢から就寝時も上腕ニ頭筋が緊張した状態が続いていると考えられる。長期目標;肩関節周囲の深部筋の活性化により、肩関節の運動を安定させ、家事動作が問題なく行える。短期目標;1週間で上腕ニ頭筋の緊張緩和、肩関節屈曲初期の代償運動を改善して夜間痛を軽減する。
P:肩の痛みなく睡眠が可能となることを目的に#1〜3を実施して上腕ニ頭筋腱の緊張緩和を図る。
カルテには記載しませんが、カルテを基に今後の順序立てや予定外の場合の対策をしておくとA(目標)、P(計画)の変更がスムーズです。
◆問題となるテーマの順序立て
- 肩の安静時痛とQOL
- 肩関節の運動時痛とADL
- 肩関節の運動時痛とIADL
- 肩関節深部筋の筋力向上と動作改善、再発予防
◆予定外の場合の対策
- 夜間痛が消失した場合;次のテーマである肩関節ROMとADLの評価
- 夜間痛が改善していない場合;姿勢分析、ADLなどを再評価
2回目以降の介入
問題となるテーマは肩の痛みとQOL
S:夜中に痛くて目が覚めることがほとんどなくなりました。今は服を着るときの方が痛みが気になります。
O:夜間痛−、安静時痛−、activeROM肩関節屈曲45°P+。運動初期の肩甲骨挙上は改善。過剰な立ち直り反応は前回同様で挙上位保持は努力的。#1は肩関節外転追加#2は座位のみに変更して実施。
A:努力的な肩関節挙上位保持により、上衣動作で痛みが増悪。短期目標;機能的な肩関節挙上保持が、5分可能となり上衣動作が改善する。
P:座位姿勢の安定、棘上筋の活性化により肩関節挙上保持を改善する。#1 ROMex(肩甲骨、肩関節屈曲・外転)#2姿勢調節(座位)#3ワイピング追加
まとめ
カルテは、医師や看護師と情報共有できるように記載することでチームとして機能しやすくなります。
丁寧な仕事は他職種からの信頼にもなるので、雑務でも手を抜かないことが大切に思います。