リハビリ計画書やケアプランで、
「移乗動作の介助量軽減」
を目標にすることは多いと思います。

この目標を達成するためには、動作を正しく誘導し、必要な身体機能を継続的に使うことが重要です。

さらに、チームで介助方法が統一されていることが、動作獲得の一番の近道になります。

一方で、

  • 介助者が楽な方法を優先する
  • 素早く終わらせることを優先する

このような介助が続くと、長期的には介助量が増える可能性があります。

今回は、自立支援を目的とした移乗介助の考え方と方法についてお伝えします。

移乗介助の基礎知識

移乗介助では、次の3点が重要になります。

  • 適切な声掛け・誘導で恐怖心を与えない
  • 安全に行えるよう介助者の負担を減らす
  • 残存機能を活かして筋力維持・改善につなげる

この3つがそろうことで、安全で自立につながる介助になります。

移乗介助の目的

自立支援としての移乗介助の目的は、立ち上がり・方向転換・着座の再獲得です。

短期的な効率を優先して、

  • 横へスライドさせる
  • ドスンと座らせる

といった方法を続けていると、長期的には介助量が増える可能性があります。

また、ドスンと落下するような着座は、腰椎圧迫骨折のリスクにもつながります。

そのため、立ち上がりと着座の理解は非常に重要です。

介助対象者の見極めポイント

次のような方は、移乗介助の対象になります。

  • 手すりを持っても離殿が難しい
    (膝折れ・転倒リスク)
  • ゆっくり座ることが難しい
    (圧迫骨折リスク)

一方で、転倒や骨折のリスクが低い方には、部分介助が望ましいです。

また、動作が遅いだけで介助することは、自立を妨げる可能性があります。

「待つこと」も重要な介助です。

立ち上がり動作の理解

立ち上がりは、主に3つの相で構成されます。

①前傾相(座位〜殿部離床)

重心を前方へ移動する時期です。

主なポイント:

  • 体幹・骨盤前傾
  • 足部固定
  • 股関節屈曲(最大約100°)

関与筋:

  • 縫工筋
  • 大腿直筋
  • 脊柱起立筋
  • 前脛骨筋

②前進相(殿部離床〜足関節最大背屈)

支持基底面が足部へ移動する時期です。

ポイント:

  • 足部への重心移動
  • 殿部離床
  • 下肢筋の収縮開始

③伸展相(最大背屈〜立位)

重心を上昇させる時期です。

主な筋:

  • 大殿筋
  • 大腿四頭筋
  • 下腿三頭筋

着座動作の理解

着座も3つの相で構成されます。

①重心前方移動期

立位から股関節屈曲が始まる時期です。

ポイント:

  • 重心を前方へ
  • 大腿四頭筋の遠心収縮

②身体重心下降期

重心が下降する時期です。

ポイント:

  • 股関節・膝関節屈曲
  • 重心のコントロール

③座位完成期

坐骨で支持できる座位を完成させる時期です。

ポイント:

  • 坐骨接触
  • 荷重の安定

移乗介助の悪い例

ズボンを持つ介助

問題点:

  • 骨盤の動きが妨げられる
  • 下肢荷重が難しくなる
  • 皮膚トラブルの原因になる

脇を持つ介助

問題点:

  • 肩甲骨挙上
  • 下肢荷重が困難
  • 腋窩痛の原因になる

顔を近づける介助

問題点:

  • 重心が側方へ偏移
  • 腰が反りやすくなる

自立支援を目的とした移乗介助

持ち方(体幹把持)

上半身の重心は、第7〜9胸椎付近にあります。

そのため、みぞおち(剣状突起付近)を包むように保持することで、体幹のコントロールがしやすくなります。

環境設定

ベッドの高さ調整が可能な場合:
移乗先を少し低くすることで、移乗が容易になります。

移乗介助の基本手順

①開始姿勢

  • 対象者は足底が床に着いた状態で座る。
  • 手が使える方は、介助者に捕まってもらうと体幹が起きやすい。(肩、上腕、脇腹など)
  • できるだけ顔を離して対象者を持つ。
  • 対象者の両膝または軸足になる側の膝に介助者の膝を当てる。

②前傾相

  • 介助者はみぞおちをへこますように腰椎を後弯させて誘導する。
  • 対象者の体幹を約20°前傾し、両下肢に荷重させる。

③前進相

  • 介助者は腰椎後弯・両膝屈曲により誘導する。
  • 対象者は両下肢に重心が移動することで、殿部の摩擦が減り両膝が前に出る。

④伸展相

  • 介助者は下肢に重心移動ができたら、膝関節伸展・腰椎伸展により立ち上がりを誘導する。
  • 対象者は足関節最大背屈位から、股関節・膝関節が伸展して立位になる。

⑤方向転換

  • 介助者は対象者の軸足(移乗側と反対の下肢)の方へ一緒に重心移動する。
  • 重心移動ができたら対側の下肢を一歩出して方向転換する。
  • 重心移動が困難な場合は、軸足を支点に方向転換する。

⑥着座準備

介助者は腰椎後弯・膝関節屈曲により、対象者の両股関節を20°程度屈曲させる。

⑦重心下降

介助者は膝関節屈曲により、対象者の重心がくるぶしの2㎝前方からはずれないように股関節と膝関節を屈曲させる。

⑧座位完成

介助者は対象者の臀部が座面が近づいたら、対象者の体幹を前傾させ、大腿後面から座面に着くように座らせる。

介助量が多い方への対応

骨盤支持での介助下肢筋力が低下している方には、
骨盤からの介助が有効です。

  • 骨盤前傾を維持
  • 膝折れを防ぐ

2人介助の考え方

1人が体幹、1人が骨盤を支えることで、下肢への荷重を促しやすくなります。

結果として、

  • 安全性向上
  • 機能活用促進

につながります。

チームで統一することの重要性

移乗介助は、誰が行っても同じ方法で実施されることが重要です。

介助方法が統一されていないと、

  • 動作が毎回変わる
  • 学習が進まない
  • 介助量が減らない

といった問題が起こります。

そのため、

  • 介助方法の共有
  • ポイントの明文化
  • 動画などでの確認

などが有効です。

実践チェックポイント

移乗介助時は、次の点を確認します。

□ 足底が接地している
□ 体幹前傾ができている
□ 下肢に荷重できている
□ ドスンと座っていない
□ 坐骨で座れている

この確認だけでも、介助の質は大きく変わります。

まとめ

自立支援を目的とした介助では、

「早く終わらせること」より
「身体機能を使えること」

が重要になります。

介助が大変に感じる場面でも、身体機能を活かす介助を続けることで、必ず介助量は減少していきます。

また、動作を急がせるのではなく、じっくり待つことも大切な介助の一つです。

日々の移乗介助が、自立への一歩になるように関わっていきたいですね。

\健康な足腰を維持するために/

私は自宅での運動に、ステッパー(ナイスデイ)を使用しています。

テレビを見ながら1日5〜10分程度でも足を動かすことができ、運動不足の予防に役立っています。

平地ばかり歩くと骨盤を十分に動かさず歩いてしまうことがありますが、ステッパーを使うことで股関節や骨盤をしっかり動かす運動ができるのが大きな利点です。

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