脳卒中片麻痺の方に対する四肢の評価には、ブルンストロームステージなどがありますが、体幹機能の評価で悩むことはありませんか?

体幹機能は、

  • 寝返り
  • 起き上がり
  • 座位保持
  • 歩行

といった基本動作の土台となる重要な要素です。

しかし実際の臨床では、

  • 体幹が「弱い」と感じる
  • 座位が「不安定」と感じる
  • でも数値化できない

このような悩みを感じることも多いのではないでしょうか。

今回は、脳卒中片麻痺患者の体幹機能評価の中でも、臨床で使いやすく実用的な

  • Trunk Control Test(TCT)
  • Functional Assessment for Control of Trunk(FACT)

この2つを紹介します。

監修:西本 武史(医師・医学博士)
介護医療院グリーン三条施設長。広島大学医学部卒業後、脳神経外科医(脳神経外科専門医・脳卒中認定医)として急性期病院20年、回復期病院6年勤務。国立がんセンター研究所で2年半研究に従事。

なぜ体幹機能の評価が重要なのか

体幹機能は、四肢の運動機能と密接に関係しています。

例えば、

  • 寝返りができない
  • 起き上がりに時間がかかる
  • 座位が安定しない

このような場合、四肢だけでなく体幹機能の問題が関係していることが多くあります。

また体幹機能は、

  • ADLの自立度
  • 歩行能力
  • 退院時の生活レベル

とも関連する重要な指標とされています。

そのため、感覚だけで判断するのではなく、評価指標を用いて数値化することが重要です。

TCT(Trunk Control Test)について

TCTは、ベッド上で実施できる体幹機能評価で、急性期から使用しやすい評価法です。

全4項目を100点満点で評価し、点数が高いほど体幹機能が良好ということになります。

また、片麻痺患者の体幹機能の研究では、起き上がり時間が短いほど体幹機能が高いという報告もあります。

TCTの評価項目

① 非麻痺側への寝返り
② 麻痺側への寝返り
③ 起き上がり
④ 座位保持

各項目の配点は以下の通りです。

TCTの配点

  • 0点:介助を要する
  • 12点:動作可能であるが正常とはいえない
  • 25点:正常に遂行可能

4項目合計で100点満点となります。

TCTを実施する際の観察ポイント

TCTでは「できたかどうか」だけでなく、動作の質を観察することが重要です。

例えば、

  • 非麻痺側だけで引き上げていないか
  • 体幹の回旋が十分に出ているか
  • 代償的な上肢固定が強くないか
  • 座位保持時に体幹が崩れていないか

これらを確認することで、今後の治療方針が明確になります。

FACT(Functional Assessment for Control of Trunk)について

FACTは、座位での体幹コントロール能力を詳細に評価できる指標です。

全10項目を20点満点で評価し、点数が高いほど体幹機能が良好となります。

この評価は、歩行能力と相関があるとされており、14点以上が歩行可能性の一つの目安とされています。

FACTの評価項目と配点

① 上肢支持ありで10秒以上端座位保持
可能:1点 不能:0点

② 上肢支持なしで10秒以上端座位保持
可能:1点 不能:0点

③ 片側の手で反対側の足首を握って戻る
可能:1点 不能:0点

④ 両側臀部を持ち上げ左右に移動
可能:2点 不能:0点

⑤ 片側臀部を3秒以上離す
両側:2点 片側:1点 不能:0点

⑥ 片側大腿部を持ち上げ3秒保持
両側:2点 片側:1点 不能:0点

⑦ 両側足底を3秒以上離す
可能:2点 不能:0点

⑧ 前後へのお尻歩き
可能:3点 不能:0点

⑨ 後方視認(肩越し確認)
可能:3点 不能:0点

⑩ 片側上肢最大挙上による脊柱伸展
可能:3点 不能:0点

FACTを実施する際の観察ポイント

FACTでは、体幹の分離運動と支持能力を細かく観察できます。

特に注目したいのは、

  • 骨盤の左右移動が可能か
  • 体幹回旋が出ているか
  • 上肢依存が強くないか
  • 支持面が変わっても安定しているか

これらは、

  • 起立
  • 歩行
  • 移乗

に大きく関係します。

TCTとFACTの使い分け

この2つの評価は、目的によって使い分けることが重要です。

TCTが向いている場面

  • 急性期
  • ベッド上中心の患者
  • 起き上がり能力の評価
  • 大まかな体幹機能の把握

FACTが向いている場面

  • 座位が可能な患者
  • 回復期
  • 歩行能力の予測
  • 詳細な体幹機能評価

このように、病期や能力レベルによって選択することが大切です。

臨床での活用のポイント

評価は「実施すること」が目的ではありません。

重要なのは、評価結果を治療につなげることです。

例えば、

  • TCTで寝返りが低得点
    → 体幹回旋練習を強化
  • FACTで骨盤挙上が困難
    → 骨盤コントロール練習を実施

このように、評価結果から課題を抽出し、介入へつなげることが重要です。

症例:体幹機能評価を治療につなげた一例

ここでは、TCTとFACTの結果をもとに、体幹機能へのアプローチを行った症例を紹介します。

症例紹介:70代男性・脳梗塞(右片麻痺)
発症後3週(回復期)

初期状態

  • 寝返り:時間がかかる
  • 起き上がり:軽介助
  • 座位:保持可能だが不安定
  • 立位:軽介助
  • 歩行:未実施

座位保持は可能でしたが、

  • 身体が後方へ倒れやすい
  • 上肢支持への依存が強い

といった特徴がみられました。

初期評価結果

TCT(Trunk Control Test)

① 非麻痺側への寝返り:12点
② 麻痺側への寝返り:12点
③ 起き上がり:12点
④ 座位保持:25点

合計:61点

→ 起き上がりと寝返りに時間がかかり、体幹回旋の不足が疑われました。

FACT(Functional Assessment for Control of Trunk)

① 上肢支持あり座位:1点
② 上肢支持なし座位:1点
③ 足首タッチ:0点
④ 臀部移動:0点
⑤ 片側臀部挙上:0点
⑥ 大腿挙上:1点(非麻痺側のみ)
⑦ 両足挙上:0点
⑧ お尻歩き:0点
⑨ 後方視認:1点
⑩ 上肢最大挙上:1点

合計:5点

→ 骨盤の左右移動や回旋が困難であり、体幹の分離運動の低下が明確になりました。

評価結果の解釈

この症例では、

  • TCT:61点
    → 基本動作は可能だが効率が悪い
  • FACT:5点
    → 骨盤・体幹の分離運動が困難

という結果でした。

つまり、
体幹が「弱い」のではなく、「分離運動ができない体幹」である
と解釈しました。

ここが、治療方針を決める重要なポイントになります。

実施したアプローチ

評価結果から、次の課題を設定しました。

主な課題

  • 骨盤の左右移動
  • 体幹回旋の促通
  • 支持基底面の変化への適応

実施した練習

① 骨盤の左右荷重練習(座位)
→ 臀部の持ち上げ練習

② 体幹回旋練習
→ 足首タッチ動作の反復

③ お尻歩き練習
→ 前後方向の骨盤移動

これらを中心に、毎日反復して実施しました。

2週間後の変化

TCT61点 → 87点

起き上がり時間が短縮し、寝返りがスムーズになりました。

FACT5点 → 13点

改善した項目:

  • 足首タッチ:可能
  • 臀部移動:可能
  • 片側臀部挙上:片側可能
  • お尻歩き:可能

特に、骨盤の左右移動能力の向上が大きくみられました。

機能面の変化

  • 起き上がり:自立
  • 立位:見守り
  • 歩行:平行棒内で開始

FACTの改善に伴い、歩行練習への移行が可能となりました。

この症例から学べること

この症例では、

  • TCTで大まかな体幹機能を把握
  • FACTで詳細な課題を抽出

することで、明確な治療方針を立てることができました。

重要なのは、
「点数を見ること」ではなく「点数の意味を考えること」です。

体幹機能を適切に評価することで、

  • 起き上がり
  • 立ち上がり
  • 歩行

といった動作獲得への道筋が、より明確になります。

まとめ

今回は、脳卒中患者の体幹機能評価として

  • TCT(Trunk Control Test)
  • FACT(Functional Assessment for Control of Trunk)

この2つを紹介しました。

どちらの評価も、できればOKではなく、

  • 体幹の安定性
  • 正しい運動
  • 代償の有無

といった動作の質まで評価することが重要です。

体幹機能を適切に評価することで、

  • 動作能力の予測
  • 治療方針の決定
  • リハビリ効果の判定

がより明確になります。

ぜひ、日々の臨床で活用してみてください。

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