セラピストの手を作る虫様筋握り|効果を引き出す3つの基本ポイント
リハビリテーションや介助での対象者の持ち方は、虫様筋握りが基本とされています。
しかし、実際の臨床では正しく持てていない方が多いように感じます。
例えば、
- 徒手療法で効果が上がらない
- 正しく誘導できているかがわからない
- 手が滑る、指に力が入ってしまう
このように悩んでいる方は、対象者の持ち方を修正することで解決することがあります。
虫様筋握りは、単なる「形」ではなく、手内在筋が働きやすい状態で対象者を把持する技術です。
そのためには、虫様筋がどのように働くかを理解することが重要になります。
今回は、虫様筋の理解を深めながら、私が臨床や指導で伝えている「虫様筋握りの3つのポイント」をまとめてお伝えします。
虫様筋握りについて
対象者を把持する際は、虫様筋が働きやすいように手掌(特に尺側)をしっかり当てて把持します。


基本となる手の形は、
- MP関節:屈曲位
- IP関節:伸展位
この姿勢は、虫様筋が最も働きやすい形とされています。
私自身は、虫様筋握りを
「手内在筋が優位に働くように手を使うこと」と解釈しています。
手掌の構造を理解する
虫様筋握りを理解するためには、手掌の構造を知ることが重要です。
① 手掌腱膜
- 手掌中央にある強靭な腱膜
- 手関節(長掌筋)から第2~5指へ扇状に広がる
- 手掌皮膚と強く癒合している
役割:
- 手掌の皮膚がずれないように支える
- 力を面として伝える
- 安定した把持を可能にする
手掌を当てることが重要な理由は、この手掌腱膜の働きにあります。
② 虫様筋
起始:深指屈筋腱
停止:指背腱膜
作用:
- MP関節屈曲
- PIP・DIP関節伸展
- 深指屈筋と共同してDIPの動きを制御
特徴:
- 筋紡錘が多い
- 手の「センサー」としての役割を持つ
つまり虫様筋は、動かす筋肉であると同時に、感じる筋肉でもあります。
手内在筋と手外在筋
手掌を使うときは、手内在筋と手外在筋が相互に作用しています。

① 手内在筋(手関節をまたがない)
- 虫様筋
- 背側・掌側骨間筋
- 母指球筋
- 小指球筋
特徴:
- 細かな調整
- 安定した把持
- 指の位置制御
② 手外在筋(手関節をまたぐ)
- 浅・深指屈筋
- 長母指屈筋
- 総指伸筋
- 長・短母指伸筋
- 長母指外転筋
- 示指・小指伸筋
特徴:
- 大きな力を生む
- 手関節角度の影響を受けやすい
重要な点:
手関節の角度によって、筋緊張が大きく変化するということです。
虫様筋握り3つのポイント
ここからは、私が臨床や指導で伝えている虫様筋握りの3つの重要ポイントをまとめます。
① 手関節中間位で把持する
虫様筋握りでは、
- MP関節屈曲
- IP関節伸展
- 手関節中間位
この3つが重要です。
手関節を中間位にすることで、手内在筋と手外在筋がバランスよく働きます。
注意が必要な手関節の角度
① 過度な背屈位

- 手指・手関節伸筋群が優位
- 長掌筋・手掌腱膜が緊張
- 手内在筋が働きにくい
② 掌屈位

- 手指外転が難しくなる
- 把持が不安定になる
- 手指屈筋群が優位
③ 尺屈位

- 橈側筋群が優位
- 手指外転が難しくなる
- 力の伝達が偏る
② 部位に応じた把持をする
把持する部位によって、手の使い方は変わります。
対象者の身体の大きい部分
(例:大腿、体幹)

- MP関節屈曲
- IP関節伸展
- 手指外転位
- 手掌全体で包み込む
イメージ:大きいボールを持つ形
手指外転を行うことで、
- 骨間筋
- 母指外転筋
- 小指外転筋
が協調し、安定した把持が可能になります。
対象者の身体の細い部分
(例:前腕、足部)

- MP関節屈曲
- IP関節伸展
- 手掌のしわ(特に尺側)を使う
イメージ:手掌で挟む感覚
③ 手関節を固定して握りを保持する
対象者の運動を誘導するときは、握り方が変わらないことが重要です。
そのためには、手関節を固定したまま
- 足腰
- 体幹
- 肩甲骨
を使って誘導します。
手関節が動くと起こる問題
- 手掌の筋緊張が変わる
- 把持が不安定になる
- 手が滑る
- 指に力が入る
これは、手で操作しようとする癖によって起こることが多いです。
よくある癖と正しい方法(例:膝関節伸展誘導)
良い例

- 手関節中間位を保持
- 手掌を当て続ける
- 足腰や肩甲骨で誘導する
悪い例

- 膝伸展に伴い手関節が掌屈
- 手掌が足底から離れる
これは、把持が不十分な場合によく起こります。
虫様筋握りができていないサイン
臨床では、次のような状態が見られたら握り方を見直すサインです。
- 指先だけで持っている
- 手がすぐ滑る
- 指が疲れやすい
- 手掌が対象者から離れる
- 力が強くなりやすい
これらは、手内在筋が使えていない状態であることが多いです。
まとめ
虫様筋握りは、リハビリや介助における対象者の持ち方の基本です。
受講されるセラピストの多くは、
- 虫様筋の筋力不足
- 把持が持続しない
- 手を添えるだけになっている
といった状態からスタートします。
しかし、ハンドリングの技術は、手の機能とともに向上します。
だからこそ、毎日正しく手を使うことがとても重要です。
虫様筋握りを見直すことで、
- 徒手療法の効果が上がる
- 誘導が安定する
- 無駄な力を使わなくなる
といった変化が起こることも少なくありません。
ぜひ、自分の手の使い方を見直すきっかけにしていただければと思います。
▶虫様筋握りの習得を速めるために、日常生活での手の使い方の記事もご覧ください。
