今回は、抵抗運動による関節可動域運動(ROM:Range of Motion)について考えてみたいと思います。

抵抗運動は筋力向上を目的に使用することが多いですが、ただ運動に負荷をかけるだけでは、筋出力がアンバランスになり、身体を痛める原因になることがあります。

負荷をかけた際に、

  • 手足が突っ張ってしまう
  • 力が入りすぎて動きがぎこちなくなる
  • 呼吸が止まってしまう

といった経験がある方もいるのではないでしょうか。

抵抗運動は、適切に行うことで筋力の改善だけでなく、ADLの獲得を早める有効な手段です。

正しい知識を持ち、効果的に活用できるようになることが重要になります。

抵抗運動とは

関節可動域運動(ROM)とは、身体の各関節が運動を行う際の生理的な運動範囲のことです。

各関節には正常な運動範囲が定められており、測定は一般的に角度計(ゴニオメーター)を用いて5°刻みで行われます。

その中で抵抗運動(Resisted ROM)とは、対象者が関節運動を行う際に、療法士が抵抗を加えて運動に負荷をかける方法を指します。

ここで重要なのは、
「負荷をかけること」ではなく「目的とする筋に適切な負荷をかけること」です。

抵抗運動の目的

抵抗運動は、評価治療の両面で活用されます。

評価としての目的

抵抗運動は、筋の最大出力や筋力レベルを評価する際に使用されます。

代表的な方法:

  • MMT(徒手筋力テスト)による最大出力の確認
  • 筋収縮の質の確認
  • 疲労の出現の確認
  • 代償運動の有無の確認

単に「力があるか」だけではなく、どのように力を発揮しているかを観察することが重要です。

治療としての目的

抵抗運動は、筋力の向上と動作能力の改善を目的として行われます。

主な目的:

  • 筋力強化
  • 筋持久力の向上
  • 運動制御能力の改善
  • 動作の安定性の向上
  • ADL能力の向上

特に、生活の中で使える筋力を育てるという視点が重要になります。

抵抗運動の適応

対象者の状態に応じて、適切に選択することが重要です。

評価としての適応

  • 抗重力運動が可能な方
  • 自動運動が可能だが筋力が不十分な方
  • 動作中に力不足が見られる方

一般的には、MMT3以上が一つの目安になります。

治療としての適応

  • 術後や麻痺などで筋力が低下している方
    (MMT3+〜4+レベル)
  • 動作時の安定性が不足している方
  • 軟部組織の柔軟性低下がある方
  • 軽度の可動域制限がある方

特に、自動運動が安定して行える段階で有効になります。

抵抗運動の注意点

抵抗運動では、負荷のかけ方が結果を大きく左右します。

代償運動に注意する

筋力が不足している場合、強い筋が代償的に働きやすくなります。

その結果:

  • 誤った運動パターン
  • 筋バランスの乱れ
  • 二次的な痛み

が生じる可能性があります。

適切な方向に抵抗をかける

抵抗の方向がズレると、

  • 本来働くべき筋が働かない
  • 運動効率が低下する

可能性があります。

関節運動の方向に一致した抵抗が重要になります。

筋の働きを妨げない

抵抗が強すぎると:

  • 動きが止まる
  • 過剰な緊張が生じる

可能性があります。

動きが保てる範囲での抵抗を意識することが重要です。

抵抗運動のポイント

抵抗運動では、筋力向上のための評価と治療が中心になります。

強化したい筋を明確にする

苦手な運動では、強い筋が無意識に補おうとします。

抵抗運動では特に、過剰出力が起こりやすくなります。

そのため、働いてほしい筋の収縮を確認しながら実施することが重要です。

注意点

  • 筋収縮を妨げない位置で抵抗をかける
  • 姿勢が崩れないようにする
  • 運動方向がズレないようにする
  • 呼吸が止まらないようにする

適切に負荷を調節する

抵抗運動では、負荷量の設定が非常に重要です。

負荷が強すぎると:

  • 筋の過剰収縮
  • 足のつり
  • 腰痛
  • 関節への負担

などが起こる可能性があります。

徒手抵抗では、呼吸を止めずに継続できる程度の負荷が適切と考えられます。

注意点

  • 姿勢が崩れない範囲で負荷を設定する
  • 運動方向がズレないようにする
  • 呼吸が止まらないようにする

スパズムや高緊張を抑制する

スパズムや高緊張が見られる場合、拮抗筋の弱化が関係していることがあります。

この場合、拮抗筋を強化することで、筋バランスの改善が期待できます。

これは、相反性神経支配という仕組みに基づいています。

一方の筋が収縮すると、反対側の筋の活動が抑制されるという特徴があります。

注意点

  • スパズムを助長しない負荷設定
  • 過剰努力を避ける
  • 緩やかな収縮を意識する

動作へのつなげ方

抵抗運動の目的は、筋力をつけることだけではありません。

最終的には、動作の中で使える筋力を育てることが重要になります。

例えば:

  • 起立動作
  • 歩行動作
  • 更衣動作
  • 移乗動作

など、具体的な生活動作と関連づけて考えることが大切です。

まとめ

関節可動域運動は、ただ関節を動かすだけでは十分な効果は得られません。

抵抗運動では:

  • 強化したい筋を明確にする
  • 適切な方向に抵抗をかける
  • 負荷を調節する

ことが重要になります。

そして、抵抗運動は

「負荷をかける運動」ではなく
「筋の働きを引き出す運動」

であるという視点を持つことで、より効果的なリハビリにつながると言えるでしょう。

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