リハビリにおける信頼関係のゴールとは?|私が「沈黙を共有できること」を目指す理由
リハビリでは、「信頼関係を築くことが大切」とよく言われます。
しかし、「信頼関係が築けた状態」とは、具体的にどのような状態なのでしょうか。
例えば、
- たくさん話すようになる
- 笑顔が増える
- 自己開示してくれる
など、セラピストによって基準はさまざまです。
私が考える信頼関係とは、対象者が安心してリハビリに集中できる環境ができていることです。
そして、その結果として現れる一つの指標が、「沈黙を共有できる関係」だと考えています。
会話の多さと信頼関係は比例しない

リハビリでは、
「沈黙になると気まずい」
「何か話さなければいけない」
と感じ、会話を続けようとする場面をよく見かけます。
そのため、対象者に好かれようとして雑談を増やしたり、沈黙を埋めようと話し続けたりするセラピストも少なくありません。
もちろん、対象者との距離が縮まることは大切です。
しかし、「仲良くなること」と「セラピストとして信頼されること」は必ずしも同じではないと私は考えています。
本当に安心できる相手とは、無理に話し続けなくても自然に同じ時間を過ごせます。
リハビリにおける信頼関係も同じだと私は考えています。
ただし、対象者にとっての安心感とは、「この人なら身体を任せられる」というセラピストとしての信頼です。
信頼関係は3つの段階で深まる
私は、信頼関係は次の3段階で深まっていくと考えています。

第1段階 話しやすさと安心感
初めてリハビリを受ける方は、多くの不安を抱えています。
例えば、
- 良くなるのだろうか
- 今日は何をするのだろうか
- この人に任せて大丈夫だろうか
対象者によって反応はさまざまです。
- あまり話さず様子を見る方
- よく話して緊張を和らげる方
- 身体の状態を詳しく伝えて反応を見る方
表面的な行動は違っても、その背景には「安心したい」「自分のことを理解してほしい」という気持ちがあります。
また、価値観も人それぞれです。
- あまり動きたくない方
- 積極的にリハビリへ取り組みたい方
- 不安が強く、まず話を聞いてほしい方
- 「早く良くなりたい」と焦りを感じている方
そのため、私は初めから「〇〇しましょう」と介入を進めることはありません。
気持ちの準備ができていないまま介入を進めると、「自分の気持ちを理解してもらえていない」と感じ、安心してリハビリに取り組みにくくなることがあるからです。
私はまず、その方が今どのような気持ちでいるのかを理解し、何に不安を感じ、何なら安心して取り組めそうなのかを一緒に考えることを大切にしています。
私が大切にしていること
- 身体の不調や生活での困りごとを聞く
- 話しやすい雰囲気をつくる
- 身体の状態や症状の原因を説明する
- リハビリの内容と目的を伝える
- 今後の見通しを共有する
- 「どうなると本人が幸せか」というゴールを一緒に考える
対象者から雑談をされることはあります。
しかし私は、目的のない雑談を自分から始めることはほとんどありません。
まずは対象者の悩みに真剣に向き合い、「この人は自分のことを理解しようとしてくれている」と感じてもらうことを大切にしています。
第2段階 身体を理解してもらえているという実感
この段階になると、対象者は
「この人は自分のことを分かってくれている」と感じ始めます。
身体の変化を一緒に確認し、小さな改善も共有することで、信頼はさらに深まります。
この頃から、自然と静かな時間が増えてきます。
私から個人的な話題を持ち出すことはほとんどありません。
その理由は、
- 話を合わせなければ
- 返事をしなければ
と、対象者が気を遣ってしまうことがあるからです。
もちろん、対象者から話題が出たときや、その方が大切にしていることについては自然に会話をします。
例えば、
- 野球が好きな方なら野球の話
- 旅行が好きな方なら旅行の話
このような会話を通して、「自分の話をしても大丈夫」と感じてもらえたらと思っています。
私が大切にしていること
- 身体の変化を対象者と一緒に確認する
- 対象者が身体の感覚に意識を向けられる時間をつくる
- 話したいときは話せる、話さなくても落ち着いて過ごせる雰囲気をつくる
第3段階 沈黙を共有できる
この段階では、対象者は自然と自分の身体の変化や感覚に集中できるようになっています。
私は必要なときだけ、
「ここに力を入れてみてください」
「足の裏は全部ついていますか?」
「左右の違いはありますか?」
など、その時に必要な声掛けをします。
それ以外の時間は、対象者が自分の身体の変化を感じる大切な時間だと考えています。
リハビリ中に静かな時間が流れても、お互いに気まずさはありません。
対象者は自然と、
- 急かされない
- 無理に話さなくてもいい
- 何かあれば聞けばいい
- 身体を安心して任せられる
と感じられるようになります。
私は、この状態が信頼関係が築けている一つの指標だと考えています。
私が大切にしていること
- 必要なときだけ声をかける
- 対象者が身体の感覚に集中できる時間を大切にする
- 沈黙を埋めず、自然に共有できる環境をつくる
沈黙が目的ではない
ここで、一つ誤解してほしくないことがあります。
私が目指しているのは、対象者と「沈黙すること」ではありません。
本当に大切なのは、対象者が安心してリハビリに取り組める環境をつくることです。
その環境があるからこそ、対象者は周囲を気にしすぎることなく、自分の身体の感覚へ意識を向けられるようになります。
その結果として、会話がなくても気まずさを感じない時間が生まれ、自然と沈黙を共有できるようになります。
つまり、大切なのは次の流れです。
- 安心感
- 身体の感覚に集中できる
- 自然と沈黙を共有できる
沈黙はゴールではなく、安心してリハビリに集中できている結果なのだと私は考えています。
私が考える「居心地の良さ」とは
この記事でいう「居心地の良さ」とは、
- 気を遣わなくていい
- 無理に話さなくてもいい
- 身体を安心して任せられる
- 自分の身体の感覚に集中できる
このような状態を指しています。
居心地が良いからといって、友達のような関係になることではありません。
対象者が落ち着いてリハビリに取り組める環境をつくることが、セラピストとしての信頼につながると考えています。
居心地の良さがリハビリの質を高める
落ち着いてリハビリに取り組める環境では、
- 身体に余計な力が入りにくい
- 身体の変化を感じやすい
- 自分の感覚に集中しやすい
という状態が生まれます。
つまり、居心地の良い環境そのものが、リハビリの効果を引き出す土台になると私は考えています。
これは手技や知識だけではなく、セラピストが身につけるべき大切な技術の一つではないでしょうか。
そして、このような関わり方は特別なコミュニケーション術ではなく、評価・観察・触れ方・声掛けといった基本の積み重ねから身についていくものだと私は考えています。
若手セラピストが何から学べばよいのかについては、別の記事で私が最初に教えたい4つの基本としてまとめています。
まとめ
私が考える信頼関係とは、「仲良くなること」ではありません。
目指したいのは、
- 不安が少ないこと
- 身体を安心して任せられること
- 自分の身体の感覚に集中できること
- 気を遣わずに過ごせること
その積み重ねの先に、言葉がなくても自然に同じ時間を過ごせる関係があります。
私は、その状態を「沈黙を共有できる関係」と表現しています。
それは、対象者が安心してリハビリに集中できる環境が整っていることを示す、一つの指標だと考えています。
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「いきなり独立は不安…」という方も、働き方を調整しながら準備を進める方法があります。

